だっさい私も私だから。28歳の夏帆が今の自分を愛せるワケ

マイナビウーマン

こどものころは、20代後半なんてもう立派な大人だと思っていたけれど、実際はどうだろう? 案外あのころのまま時間が止まっている。

今の私は、安定した職に就けて、生活に不自由がないくらいにはお給料ももらえて、おまけに恋もしている。

何不自由ない幸せ野郎だ。

でも、それでもなんだかやりきれない思いに苛まれる夜がある。

彼女にもあるのだろうか、そんな夜が。

■女優を続けているなんて予想外だった「きっかけはスカウトでした。

それまではこの世界に入るなんて考えたこともなかったし、お芝居なんてとてもじゃないけどできないと思っていたんです。

ただ、出会いには恵まれていて。

作品で関わる人たちを通して、仕事の面白さや、映画の現場って楽しいなと思えるようになりました」堅い意志があったわけではない。

そう語り、朗らかに笑ってみせた。

2007年、映画『天然コケッコー』で彼女を知ったという人が多いのではないだろうか。

夏帆=清純派として轟いたその名は、今なお輝き続けている。

「なりたい自分」になれている人なんて、世の中そんなに多くはない。

でも、なぜか彼女はその中でもマイノリティー側にいる人なんだろうと思い込んでいた。

等身大の彼女は、「今の自分」とどう向き合っているのだろう。

■私も同じ。

抗えないものへの不安を抱えている

2019年10月11日公開の『ブルーアワーにぶっ飛ばす』。

夏帆演じる砂田は、仕事に明け暮れながらも、理解ある夫と満ち足りた生活を送っている、ように見えていた。

だが、本当は「大人」として完璧とは程遠く、穴だらけ。

痛々しいくらいに不器用だ。

そんな砂田とリンクする部分が彼女自身にもあるという。

「時間って止められないじゃないですか。

自分自身はどこか止まってしまっているのに、いつの間にか大人と言われる年齢に差し掛かって。

でもそんな中で自分もまわりも変わっていっている。

その時間の流れを止めることができない焦燥感とか、そういう揺らぎっていうものは、私も感じます」淡々とした口調とは裏腹に、彼女も28歳のひとりの女性として逆らえない何かに戸惑いがあると明かす。

「理想みたいなものがあったんですよ。

不器用なのに、理想だけは高くて。

そこに囚われていたというか、がんじがらめになっていた時期もあります」私たちは理想や目標という目印がないと進行方向を見失うくせに、掲げたものの大きさにひとり押しつぶされてしまうときがある。

そのたびに、「もっとうまくやれるはずだった自分」に失望したりして。

ただ、そんな不器用な自分を受け入れられるようになったのも「時間」のおかげだという。

■時間には逆らえないけど、時間が教えてくれることがある

「今もこうなりたいという理想はもちろんあるんです。

でも、そういうことよりも、もう少し肩の力を抜いて今の自分を受け入れて、向き合っていかなければいけないなって思うんですよね。

砂田もそう。

自分のことを受け入れて前へ進んでいく。

そういうことができたらいいなって。

そう思えたのは時間のおかげですかね」平等に流れる時間の中で、ゆっくりとそう思えるようになったと彼女は語る。

「一度壁にぶつかってどん底まで落ちると、次に同じ状況になったときにちがう視点でその状況と向き合える気がするんですよね。

だから、何事も経験なんじゃないかなと思います。

結果何年後かに、悩んでよかったな、つらい思いしてよかったなと思うときが必ずくると思うんですよね」そして、こう続けた。

「人って良いときより悪いときのほうが成長できるじゃないですか。

自分がほんとに変わりたいなと思うときって、何もうまくいっていないときのほうが多い。

だからそのときは、もがけるだけもがいたらいいんだろうなって思いますけど、どうなんですかね? 正直、私にもわかりません(笑)」彼女の言葉には、たくさんの経験や感情から生まれたであろう泥臭さがあった。

時短、コスパ、ミニマリスト。

なんでも最短・最少で利益を求めにいく風潮がある中で、「何もかも財産だ」と胸を張って言えるところまで感情を昇華して生きている彼女は、不器用ながらも立派な大人に見えた。

最後に私事をひとつ。

実は今回が人生初のインタビューだった。

緊張のあまり質問の最中に頭は真っ白になり、何ひとつ言葉が出てこない。

終わった。

そう思ったとき、彼女は私にこう言った。

「取材でよく聞かれることとかお話ししましょうか?」私を気遣った提案に、現場の空気がほころんだ。

ああ、肩の力を抜いて「今の自分」をまるっと受け止めている彼女には、余裕という余白があるのかもしれない。

私もあと数年でそんな大人になれるだろうか。

まだまだ、そんな余裕はなさそうだけど、こういう人に私はなりたい。

(取材・文:鈴木美耶、撮影:大嶋千尋)映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

30歳・自称売れっ子CMディレクターの砂田(夏帆)は、東京で日々仕事に忙殺されながらも満ち足りた日々を送っている……ように見えるが、心は荒みきっている。

ある日、病気の祖母を見舞うため、自由で天真爛漫な秘密の友だち・清浦(シム・ウンギョン)と砂田の嫌いな故郷に帰ることに。

しかし、東京で身に着けた砂田の理論武装は通用せず、やがて見ようとしなかった本当の自分が顔を出す――。

一日の始まりと終わりの間に一瞬だけおとずれる“ブルーアワー”が終わるとき、砂田と清浦に訪れるものとは。

10月11日(金)より、 テアトル新宿、ユーロスペースほか全国公開!。

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