【医師監修】PMS(月経前症候群)の原因と緩和するための方法とは
「なんだかイライラする…」
「頭が痛い…」
「胸が張る…」
「やけに眠い…」
生理前になると強くなる、上記のような症状。
程度の差こそあれ、女性なら誰しも感じたことがあるのでは?
こういった症状は、PMS(月経前症候群)と呼ばれています。
「言葉は聞いたことあるけど、詳しいことは理解できてないかも。」
そんな方も多いかもしれませんね。
毎月やってくる生理とPMS(月経前症候群)。
避けることができないものではありますが、一生付き合っていくものですから上手に乗り切りたいですよね。
PMS(月経前症候群)は対処が難しいと言われていますが、少しの工夫で緩和できる方法はたくさんあります。
本日は、レディースクリニックの院長も務める専門医監修のもと、そんなPMS(月経前症候群)との付き合い方についてお話ししていきます。
PMS(月経前症候群)ってなに?
そもそもPMSって一体何なのでしょうか?
PMSとは、Premenstrual Syndromeの略。
日本語で言うと「月経前症候群」です。
つまり、生理前に起こる不快な症状のことです。
PMS(月経前症候群)には、身体症状とメンタル症状があるのですが、数えきれないほどたくさんの症状があります。
代表的なPMS(月経前症候群)の症状例は次のようなものです。
(1)無性にイライラする
(2)胸が張ってくる
(3)お腹が痛くなる
(4)眠たくなる
(5)肌が荒れやすくなる
(6)憂鬱な気持ちになる
(7)頭が痛くなる
(8)つい周りに当たってしまう
(9)お腹が空いてドカ食いしてしまう
(10)集中力がなくなる
ここであげた症状は、ほんの一部。
また、PMS(月経前症候群)は個人差があり、人によって症状の出方や強さはバラバラです。
上記に挙げた項目も、当てはまるものもあれば当てはまらないものもあるかもしれませんね。
PMS(月経前症候群)の原因は?
いちばん気になるのは、「なぜPMS(月経前症候群)が起こるのか?」ということですよね。
残念ながら、PMS(月経前症候群)の原因は科学的にはっきりしていません。
しかし、一節によると、「ホルモンバランス」が大きく関係していると言われています。
女性ホルモンには、2つの種類があります。
「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」です。
この2種類の女性ホルモンは、生理周期によって分泌量が変化します。
特に、生理前はこの2つのバランスが大きく変化するのです。
PMSの原因は排卵した後に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響が関与していると考えられています。
黄体ホルモンの本来の働きは子宮内膜を受精卵が着床しやすいように整え、妊娠を助け、妊娠した場合は分泌が続き、赤ちゃんが育ちやすい子宮環境を整えます。
妊娠していなければ分泌量が減少し、生理が来ます。
プロゲステロン(黄体ホルモン)が増える時期なので、生理前のことは「黄体期」と呼ばれています。
このホルモンバランスの急激な変化が、PMS(月経前症候群)の大きな要因ではないかと言われているのです。
エストロゲンとプロゲステロンって?
では、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)とは一体なんなのでしょうか?
これらのホルモンは、どちらも赤ちゃんを授かるために欠かせないホルモンです。
エストロゲンには「妊娠の準備をする」「体を女性らしくする」などのはたらきが、プロゲステロンには「妊娠の継続をサポートする」「女性の体を守る」などのはたらきがあります。
これらのホルモンによって体に起こる変化は、次の通りです。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
・女性らしい体つきにする
・血流を良くする
・真皮のコラーゲンを生成し、肌に潤いやハリを与える
・骨にカルシウムを蓄える
・自律神経を安定させる
プロゲステロン(黄体ホルモン)
・受精卵が着床しやすくするように子宮内環境を整える
・基礎体温を上昇させる
・妊娠の維持に役立つ
といった作用の他に
・血行が悪くなる
・抑うつ状態になりやすくなる
・むくんだり、太りやすくなる
・腸のぜん動運動を抑える
といったうれしくない作用があります。
このようにみていると、プロゲステロンは妊娠に必要なホルモンであると同時にあまりうれしくない副作用もあることがわかります。
PMS(月経前症候群)は、このプロゲステロン分泌の急激な変動が関係しているのではないかと言われています。
PMSを緩和するためにできる2つのこととは?
では、PMS(月経前症候群)を少しでも緩和するために、私たちができることは一体なんなのでしょうか?
PMS(月経前症候群)を緩和するための方法は大きく分けて2つあります。
繰り返しになってしまいますが、PMS(月経前症候群)の原因は、「ホルモンバランスの変動」であると言われています。
(科学的にあきらかにはなっていません。)
そのため、「ホルモンバランスを整えるもの」を摂ることが、PMS(月経前症候群)の緩和につながる可能性があります。
これが、私たちができることの1つめ。
2つめは、「対症療法」です。
イライラ、眠気、肌荒れなど、さまざまなPMS(月経前症候群)に対して、対症療法的に症状を和らげることは可能です。
もちろん、完全によくなるわけではありませんが、少しの工夫でだいぶマシになるかもしれません。
「ホルモンバランスを整えるものの補給」と「対症療法」、これが私たちにできるPMS(月経前症候群)緩和策です。
ここからは、具体的な方法についてご説明したいと思います。
PMSを緩和するための工夫(1)大豆イソフラボンを摂る
エストロゲンに似た作用のあるものといえば、「イソフラボン」が有名ですよね。
イソフラボンには、エストロゲンに似た作用があり、ホルモンのバランスを整えてくれるという作用が期待されています。
イソフラボンは、大豆製品に多く含まれています。
豆腐、納豆、味噌、豆乳など、幸いなことにここ日本にはさまざまな大豆食品があります。
積極的に食事に取り入れて、イソフラボンを補給しましょう。
なお、イソフラボンを体内で有効活用するためには、イソフラボンを「エクオール」という物質に変える必要があるのですが、2人に1人は体質的にこれを変化させられないと言われています。
エクオールに変化させる能力があるかどうかは検査キットで簡単にチェックできるので、自分はどうなのか検査してみましょう。
もしエクオールに変化させる能力がなかった場合、大豆製品を積極的に摂取してもあまり効果が見込めないので、エクオールのサプリメントなどを活用してもいいかもしれません。
PMSを緩和するための工夫(2)軽い運動をする
意外にも、PMS(月経前症候群)には「運動」が大変効果的だと言われています。
ランニング、ジョギング、ダンス、サイクリングといった有酸素運動を行うことで、憂鬱感、疲労感、イライラ、集中力の低下、頭痛などが緩和するようです。
メカニズムに関してはまだ明確ではありませんが、「実際に症状がマシになった!」という方も多いようなので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?
PMSを緩和するための工夫(3)低用量ピルを処方してもらう
PMS(月経前症候群)を緩和するための最後の方法、それは産婦人科などで「低用量ピル」を処方してもらうことです。
ピルというと「避妊」というイメージが強いため、抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれませんが、実はPMS(月経前症候群)を緩和する作用もあります。
ピルを内服することで排卵しなくなるので黄体ホルモンが卵巣から分泌されなくなり、PMSに対して80~90%効果を発します。
PMSだけではなく様々な生理のトラブルを改善してくれるものがピルだと考えてよいでしょう。
精神的症状、肉体的症状のどちらに対しても効果があるので、PMS(月経前症候群)がつらくてたまらない…という方は一度医師と相談してみてはいかがでしょうか?
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本日は医師監修のもと、PMS(月経前症候群)の緩和法についてご紹介してまいりました。
PMS(月経前症候群)の原因はまだ科学的に解明されていないので、抜本的な解決策はないかもしれませんが、工夫次第で緩和させることは可能です。
毎月やってくる生理ですから、上手に付き合っていきたいものですね。
監修医師プロフィール
直レディースクリニック 院長 竹村 直也
[経歴]
2000年神戸大学医学部卒業。2008年神戸大学医学部大学院修了。
兵庫県立こども病院、日高医療センター勤務した後、神戸大学病院産科婦人科助教。
淀川キリスト教病院産科婦人科部長、竹村婦人科クリニック勤務の後2020年5月直レディースクリニック開業。
[保有資格]
・医学博士
・産婦人科専門医
・母体保護法指定医
[クリニック紹介]
最終更新日: