ストレスが原因でつい食べ過ぎてしまう「エモーショナル・イーティング」とは【薬剤師執筆】
イライラしたり落ち込んだりすると、ついつい食べすぎてしまう…。
やめようと思ってもなかなかやめられなくて困っている…。
なんて人も多いのでは?
このようにストレスが原因で食べ過ぎてしまうことを「エモーショナル・イーティング」といいます。
この記事では、エモーショナル・イーティングとは何なのか、食欲をどうコントロールするのか、どんなストレス解消法があるのかを解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
エモーショナル・イーティングとは
まず、エモーショナル・イーティングとは、ストレスなどネガティブな感情に左右されて過剰に食べることです。
おなかがいっぱいになっているのに食べ続けてしまうのはなぜなのか、なぜやめられないのか、見ていくことにしましょう。
1.特徴
エモーショナル・イーティングの特徴として、次の3つが挙げられます。
・おなかがいっぱいなのに、食欲が止まらない
・高カロリーなものばかり食べたくなる
・習慣化してしまう
では、それぞれどんな状態なのでしょう。
脳からは、「おなかが空いた」とか、「もうおなかいっぱいだよ」「もう食べなくてもいいよ」という信号が出ます。
ところがエモーショナル・イーティングの人は、ストレスを感じてネガティブな気分になると、この信号がうまく働かなくなってしまいます。
そして「レプチン」という食欲をコントロールするホルモンの働きが悪くなり、満腹を感じることができなくなると、食べ続けるようになるのです。
一度エモーショナル・イーティングを発症してしまうと、糖質や脂質を求めるようになるため、ハンバーガーやカップラーメンのような高カロリーなものを食べたくなります。
これが太る原因となってしまうのです。
他にも揚げ物やクリームなどの乳製品なども食べたくなるため、ストレスがたまらないように上手に発散してあげる必要があります。
また、こうした食生活を続けていると、それがいつしか習慣化してしまい、余分に体内に取り入れられた糖質や脂質が消費されることなく蓄積し、やがて生活習慣病へとつながる危険性が!
そうなる前に、このストレスによる一連の流れを断ち切るよう、できることからはじめてみる必要があります。
2.原因
エモーショナル・イーティングが発症する原因は、ストレスです。
ストレスの要因にはさまざまなものがあり、ひとつだけとは限りません。
ストレスは、自分が自覚しているもの以外にもあるのかもしれませんので、ここでチェックをしてみましょう。
・いつも何かを食べている
・一度にたくさん食べてしまう
・ストレスを感じると食べることが多い
・満腹になるまで食べる
・たくさん食べた後、罪悪感がある
当てはまるものはいくつありましたか?
多く当てはまる人は要注意です。
3.エモーショナル・イーティングによる症状
エモーショナル・イーティングは、「過食症」という摂食障害の一種です。
通常の過食症は、夜間に症状が出ますが、エモーショナル・イーティングの場合はストレスが耐え難くなったときに、食べることによってそのストレスを解消しようとします。
普段から食べる量が多いということとは違い、自分ではコントロールできないものであるため、病院で診てもらい、薬などによる治療が必要になります。
エモーショナル・イーティングの症状には、次のようなものがあります。
・早食いしてしまう
・食べ過ぎでおなかや胃が痛い
・3食以外にも食べずにはいられない
・食事にお金をかけすぎて、生活に困っている
・食べた後に罪悪感で、無気力になる
こうした症状がみられるようになったら、病院で医師に相談してストレスの解消と同時に薬などによる治療を受けましょう。
食欲とストレスの関係
ストレスを感じるとどうして食欲が出てくるのでしょうか。
今度はその仕組みをみてみましょう。
ストレスを感じると、カラダはこのままでは危険だ! と判断して、副腎皮質から「コルチゾール」というストレスホルモンを分泌します。
このホルモンは生命を維持するために必須のホルモンで、カラダが危機的な状況になればなるほど分泌量が増え、食欲のコントロールを抑制するようになります。
つまり、ストレスを受ければ受けるほど食欲が増して、きちんとカラダが動くようにしてくれる、ありがたいものなのです。
しかし、それも度が過ぎれば、カラダの臓器はそれらを処理しきれなくなってしまい、悪影響を及ぼすようになってしまうのです。
ストレスによる食べ過ぎへの対処
ストレスで食欲が増して、生命維持を助けてくれることはわかりました。
しかし、食べ過ぎてしまうことへの対処は必要です。
食べ過ぎないようにするために、ここでは3つの方法を解説していきたいと思います。
毎日意識するようにして、少しずつ改善していくようにしてください。
1.腹八分目を意識する
食事を腹八分目にするには、次のようなことを意識してみましょう。
・よく噛んで、ゆっくり食べる
・お皿に小分けして食べる
・食べる順番に気を付ける
・食べることに集中する
・3食きちんと食べる
・種類を多く、量を少しだけ食べる
早食いはしないように気をつけましょう。
食事をして満腹になったという信号が脳に届くまで、20分はかかると言われています。
ゆっくり時間をかけて食事を味わったら、腹八分目で食事をやめ、お茶でも飲んでゆったりしてみてください。
2.ながら食べをしない
何かをしながら食べる「ながら食べ」にも要注意です。
ゲームをしながら、仕事をしながら、TVを見ながら、そんな風に「ながら食べ」をしていると、自分が何をどれほど食べているのかに対して意識が向かなくなります。
食べることに集中して、1口1口しっかりと食べ物を咀嚼してみてください。
たくさん咀嚼をすることで唾液が出て、満足度もあがります。
過食しないように意識を向けて、食事を味わいましょう。
3.規則正しい1日3食
そして、基本ともいえる「規則正しく1日3食」の食事が大切です。
食事と食事の間は4時間以上あけるとよいとされています。
食べものが消化され、次の食事の受入準備ができると、空腹を感じるようになります。
たとえば朝は7時、昼は12時、夜は18時というように、時間を決めるのもひとつの手です。
規則正しく食べ、消化から空腹への流れができるようになると、カラダもそれを覚えて規則正しく機能するようになります。
食事のことでストレスを感じないよう、少しでもストレスを減らせるよう、食事に向き合ってみてください。
少しずつ食欲がコントロールできるようになっていきます。
日頃からできるストレスケア
ストレスによる過食を招かないよう、日頃からできるストレスケアをいくつか解説していきたいと思います。
いつの間にかすごくストレスが溜まっていた!ということがないように、普段からこまめにストレスケアをしてため込まないことが大切です。
エモーショナル・イーティングを発症する前に対策しておきましょう。
1.マインドフルイーティング
「マインドフル・イーティング」という言葉をご存じですか?
この言葉は、米国の大学名誉教授ジーン・クリステラー博士が作り出したものです。
食事をするときには、五感を使って食べることに集中することで、少量の食事でも満足感を得られるようになるというものです。
マインドフルネス療法を提唱した米国のジョン・カバット・ジン博士が、「レーズンエクササイズ」というものを創始していますので、解説していきたいと思います。
<手順>
・レーズンを1粒手に取る
・レーズンを眺める
・レーズンのにおいをかぐ
・口の中でゆっくり噛む
・レーズンを飲み込む
このレーズン1粒を味わうことに五感を使って集中することで、心を落ち着かせることができるというものです。
日本食だとしたら、お米1粒でやってみるのもいいかもしれません。
今食事をしていることに集中すれば、食べ過ぎを防ぐことができそうですね。
2.ビタミンやミネラルを意識して摂取
ストレスケアにはバランスの取れた食事がとても大切です。
肉や魚といったタンパク質はとても大切な栄養素ですが、ビタミンやミネラルは、このタンパク質をエネルギーに変換するために欠かせない栄養素です。
たとえば、タンパク質とビタミンをいっしょに摂ると、ビタミンがタンパク質の筋肉への変換をサポートします。
また、栄養素を利用したり吸収したりしやすくなるので、代謝が良くなり、脂肪燃焼の効果があります。
ビタミンやミネラルはサプリメントもいろいろありますが、他の栄養素とともにバランスを意識して、なるべく食品から摂るように心がけましょう。
3.有酸素運動
有酸素運動もまた、ストレスケアには欠かせません。
特に、おなかが空いているときに有酸素運動をすると、血中のアシルグレリンという食欲増進ホルモンが減少し、食欲が低下することがわかっています。
エモーショナル・イーティングの状態にあるときに、何か食べたくなってきたら、有酸素運動をしてみましょう。
汗をかくことでストレスホルモンが分泌され、セロトニンやエンドルフィンといった精神を安定させる物質が出てくると、ストレスが軽減し食欲が低下してきます。
散歩なら20分以上歩くことで、有酸素運動になります。
急なスポーツは無理でも、ちょっとした散歩からはじめてみるといいですね。
食べ過ぎ対策には漢方薬もおすすめ
運動や食べ過ぎのコントロール習慣に加えて、ストレスによる食べ過ぎには 、漢方薬で対策するのもおすすめです。
漢方薬は、自律神経を整えて、ストレスによる過食を軽減する働きが期待できます。
さらに、脂質代謝を高め、老廃物を排出したり、血流を改善したりすることで代謝を上げて、太りにくく痩せやすい体質へとアプローチすることができます。
何を選んだらいいかわからないときは、医師や薬剤師に相談してみましょう。
●防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
食べ過ぎてしまう人におすすめ。
いつも食べているような状態は胃腸に負担をかけています。
防風通聖散は、過剰な食欲を抑える働きが期待でき、脂肪の分解・燃焼を促してくれます。
また、便通の改善も期待できるので、腸がすっきりしてきます。
●防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)
むくみがひどい人におすすめ。
防己黄耆湯は、水分代謝の改善が期待できる漢方薬です。
余分な水分を排出してくれるので、むくみがちな人にはおすすめです。
肥満に伴う関節の腫れや痛みにも効果があります。
●大柴胡湯(だいさいことう)
ダイエットでリバウンドしやすい人におすすめ。
大柴胡湯は余分な脂肪を燃焼してくれます。
カラダの調子を整えて、自律神経の不調の改善も期待できるので、イライラや食べ過ぎを防いでくれます。
自分に合う漢方薬を知りたいという人は、漢方のプロにオンラインで個別相談できる『あんしん漢方』もおすすめ。
AI(人工知能)が個々人に効く漢方を見極めて、自宅まで郵送してくれるという大変便利なサービスです。
まとめ
いかがでしたか?
エモーショナル・イーティングは、ストレスが溜まった心のサインなのかもしれません。
いつもより食べ過ぎているなとか、なんだか食欲をコントロールできなくなってきたなと思ったら、まずは自分のライフスタイルを見直してみましょう。
カラダのバランスがくずれるような食事の仕方や生活をしていると気付いたら、できることから少しずつ改善してあげましょう。
気が付いたら、エモーショナル・イーティングから抜け出しているかもしれません。
<参考>
ツムラ「防風通聖散」
https://www.tsumura.co.jp/brand/products/kampo/062.html
ツムラ「防己黄耆湯」
https://www.tsumura.co.jp/brand/products/kampo/020.html
ツムラ「大柴胡湯」
https://www.tsumura.co.jp/brand/products/kampo/008.htm
執筆者プロフィール
山形 ゆかり(やまがたゆかり)
あんしん漢方薬剤師
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。
病院薬剤師を経て食養生の大切さに気付く。
牛角吉野家の他、薬膳レストラン等15社以上のメニューを開発。
また、健康や美容情報を発信するYouTubeチャンネル『Medical Health -メディヘル-』では簡単薬膳レシピ動画も公開中。
さらに、一人ひとりの症状や体質に合った漢方をオンラインで簡単に相談できる、先程もご紹介したAI漢方サービス『あんしん漢方』で薬剤師務める。