更年期のイライラ・不眠・倦怠感に。プラセンタ注射の効果と安全性【医師が解説】
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更年期世代になると、自律神経の乱れからさまざまな不調が現れます。
「無性にイライラする」「理由もなく落ち込む」「漠然とした不安感がある」「だるくてやる気が出ない」など、今までと違った心の変化を感じている方も少なくないかと思います。
更年期障害は、主に女性ホルモンの減少による自律神経の乱れが元になって起こります。
しかし、一般的な婦人科でケアしてもらえるのは、ホットフラッシュや多汗など体の不調がメイン。
心の不調についてはケアしてもらえず、仕方ないと我慢している方も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、婦人科と心療内科の専門医で、更年期の女性を毎日診察している横倉恒雄先生にお話を伺いました。
横倉先生のクリニックは「優しいカウンセリングをしてくれる」と評判で、悩める女性たちが絶えず来院しています。
今回の取材では、更年期の女性の脳の状態、先生が多くの女性に知ってほしいと勧めている ”プラセンタ注射” の効果と安全性について、またセルフケアで調子を整える方法を教えていただきました。
INDEX
更年期の不調は3つの要因が絡み合って起こる
何となくの不調が続き、更年期障害の症状なのか、他の要因からきているのかハッキリしないと感じている方は多いと思います。
更年期の不調の原因は、いったいどこにあるのでしょう?
「更年期の不調の原因は実に複雑で、ひとつの要因に絞り込むのは難しいケースが多いです。
大きく分けると、次の3つの要素が絡み合って症状として現れると考えられています。
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まず1つ目は、女性ホルモンの急激な減少という身体的な要因です。
2つ目は、個人が持っている心理的な要因。
几帳面、完璧主義、ストレス耐性が弱いといった性格が症状に影響することもあります。
そして3つ目は、環境要因です。
仕事上のストレス、子育てや夫婦関係、親の介護、学費など更年期世代を取り巻く環境にはストレスがたくさん。
更年期の不調は、これら3つの要因が相まって起こっているため、どれか1つの要因からのアプローチでは改善に限界があります。
しかし多くの場合、これらを総合して判断されていないのが現状です」と横倉先生は語ります。
更年期に、心身共に健やかな状態でいられるためには脳が健康であることが大切
女性ホルモンは脳からの指令で分泌されるものですが、更年期を迎える女性の脳はどのような状態になっているのでしょうか?
「更年期世代の女性は、もともと仕事や家庭など何かとストレスを多く抱えがち。そこに女性ホルモンの急激な減少と自律神経の乱れが重なることで、脳が疲弊しやすくなってしまいます。加えて、現代ならではの情報過多も、更年期の脳の疲労を加速させる要因になります。
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ストレス過多になると、脳の理性をつかさどる部分がオーバーヒートし、ストレスを過剰に感じるようになります。
すると交感神経が常に緊張し、脳に余裕がない “疲弊脳” の状態に。
健康の司令塔である脳が正常に機能しなくなるため、更年期特有の不調・不眠・自律神経の乱れ・体重増加など、さまざまな不調を引き起こしてしまうんです。(上記イラストの右側)
反対に、ストレスをうまく受け流せる “健幸脳” の状態でいられるよう心がけることで、副交感神経が優位に働き、更年期であっても、心身ともに健やかな状態を保つことができるようになります。(上記イラストの左側)」(横倉先生)
更年期の心の不調には、脳がストレスを軽くとらえることができるかどうかが、大きく関わっているのですね。
更年期障害の治療には ”プラセンタ注射” がおすすめ
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婦人科でできる更年期障害の治療には、ホルモン補充療法(HRT)や低用量ピル、プラセンタ注射、漢方薬、エクオールなどのサプリメントなど複数の治療法があります。
そのなかでも、横倉先生はプラセンタ注射をいちばんにお勧めしているそうです。
「更年期障害の疑いがある患者さんに対して、私のクリニックでは、ホルモン検査・更年期テスト・心理テストを行い、体と心の不調の両面からアプローチするようしています。
婦人科で行われるHRTは、更年期障害の代表的な治療法ですが、血栓症、乳がん、子宮体がんの発生率が上がるリスクがあるため、通常よりも多い頻度で定期検査をしていく必要があります。
一方、プラセンタ注射は副作用がほとんどありません。また更年期の心の不調を心療内科に行って相談すると、精神安定剤を処方されることが多いのですが、プラセンタには自律神経を調整してくれる作用もありますが、HRTにはその効果が弱いんです。年齢によって保険適用で受けられることもあり、私のクリニックではまずプラセンタ注射をお勧めし、症状が重い場合は漢方療法やホルモン補充療法を併用しています。HRT、プラセンタ注射の主だった特徴については下記の表を見てみてください」(横倉先生)
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医療用プラセンタは「ヒトの胎盤」から抽出したもの
“プラセンタ”と聞くと、美容液などに使われていてエイジングケアに効くというのは知っていても、詳しく知らない女性が多いと思います。
更年期におすすめのプラセンタ注射は、美容で使われるものと同じものなのでしょうか。
また、なぜプラセンタが更年期の症状に効果的なのか教えてください。
「プラセンタとは日本語で ”胎盤” のこと。胎児に大切な栄養や酸素を届ける役割を担っている胎盤には、ビタミンB群、ミネラル、アミノ酸、核酸、各種成長因子など、さまざまな栄養素が豊富に含まれています。
化粧品やサプリメントで使われるプラセンタは、馬や豚の胎盤から抽出されたエキスです。一方、更年期障害の治療として厚生労働省が認可している “医療用プラセンタ” は、日本国内の正常分娩で生まれたヒトの胎盤から有効成分を抽出したものになります。
プラセンタエキスの配合されたドリンクなども売られていますが、医療用のプラセンタ注射と比較すると濃度がかなり薄いので、効果が得られるまでにとても時間がかかります」(横倉先生)
心の不調・慢性疲労にも効果が期待でき、肌や髪がきれいになるプラセンタ注射
プラセンタ注射は、どのような症状を改善できるのでしょうか?
「更年期世代の女性によく見られるさまざまな症状に効果が期待されていて、実際にうちのクリニックの患者さんに効果があったものは次のような症状です。
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自律神経のゆらぎによる不調のケアは、HRTよりもプラセンタ注射の方が効果が期待できます。プラセンタ注射をしている女性は、肌や髪がつやつやして外見もキレイになることを実感でき、また疲れが取れやすくなると同時に疲れにくくもなり、明るく元気になる患者さんが多いのも良い効果だと思っています」(横倉先生)
プラセンタ注射が浸透していない理由
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更年期の不調に"プラセンタ注射"がよいことが浸透していないのはなぜですか?
「プラセンタがなぜ更年期障害に効果があるのかは、まだ研究中で完全には解明されていません。そのため、医師も患者も半信半疑になりやすく、日本では他の治療法が優先されてしまっているんです。
そんななか私は、慶應大学付属病院にいた頃に胎盤の研究をしたこともありますが、プラセンタが持っている細胞の再生能力が、体調の改善に繋がっているのではないかと思っています。
プラセンタ注射の効果は、婦人科と心療内科の両方を診ている医者として、長年の診療のなかで確信しているため、積極的に取り入れています。また、40歳くらいからプラセンタ注射をしていると、更年期障害が軽い不調で終わるケースが少なくないです」(横倉先生)
患者さんの効果実感と副作用などをトータルで考えて、勧めていらっしゃるんですね。
プラセンタ注射は世界で60年以上にわたり使用されている
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プラセンタ注射はどのくらい安全な治療法なのでしょうか?
「プラセンタは、世界で60年以上にわたり使われてきましたが重篤な副作用は報告されておらず、安全性の問題はないと言えるでしょう。注射した後におこる可能性があるのは、ごくまれに注射部位の疼痛・発赤・悪寒・発熱・発疹など軽微なものだけです。
製造工程においても、胎盤の核酸増幅検査を行い、B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・HIVウイルスが陰性であることが確認された安全な胎盤のみを使用します。高圧蒸気滅菌によりウィルス・細菌の感染防止対策をとっているため感染症の報告もありません」(横倉先生)
血栓症や婦人科系のがんリスクが高まるおそれがあるHRTより、安全性やリスクの面でもメリットが大きいことがわかります。
プラセンタ注射を受けられる医療機関
プラセンタ注射は、婦人科であればどこでも受けられるものなのでしょうか?
「プラセンタ注射はすべての婦人科で受けられるわけではありません。プラセンタ注射を行っている医療機関を探す場合は、近隣のクリニックのホームページなどで確認するか、直接問い合わせてみるのがいいでしょう。
年齢によって※保険適用での接種が可能です。注射代と診察料で、1回約500円程度で打てるところが多いと思います」(横倉先生)
※保険適用となる年齢は、病院によって多少変わります。
実際に、通いたい地域名+婦人科+プラセンタ注射とキーワードを入れて、検索して調べてみたところ、郊外の街でも1~2件ほどヒットしました。
更年期のストレスには “五感” を意識したセルフケアを
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プラセンタ注射に加えて、私たちが普段の生活のなかで意識して行うとよいセルフケアはありますか?
「忙しい毎日を送っている方が多いかと思いますが、ちょっとした隙間時間などに “五感” を意識して生活してみてください。
同じストレスでも、大きく感じてしまうのか、それとも上手に発散して小さく感じられるのかで、脳の不調は大きく変わってきます。そのためには、人間本来の感覚である五感を大切にしながら過ごすことが大切なんです」(横倉先生)
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横倉先生は、クリニックでも五感の大切さを普段から患者さんに伝えているそう。
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の5つの感覚は脳と連動しているため、適度に心地よい刺激をすることで、結果、ストレスをコントロールできるようになるとのこと。
そんな健幸脳になるために、今日からすぐに取り入れられることを3つご紹介します!
健幸脳にする過ごし方のコツ3選
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「好きな色の服や小物を身に着けたり、身の回りに置くことを積極的にやってみましょう。
五感は脳に直結しているので、好きな色を視覚的に取り入れることで、脳を活性化させ、自律神経のバランスを整える効果があります」(横倉先生)
「外を歩くときは、ただ目的地に向かって歩くのではなく、風を感じたり、鳥の声に耳を傾けたり、花の香りを嗅いだりしながら歩いてみてください。信号待ちをしている間も、スマホでなく、空をちょっと見上げてみましょう。五感を意識して歩くことで、脳がリラックスし、ストレスを軽減することができますよ」(横倉先生)
「脳に五感からの刺激を与えるのと同時に、休息をとって休ませることも大切。お昼ご飯の後などに10~20分程度の短い昼寝をするだけで、脳のスイッチが疲弊脳から健幸脳に切り替わり、午後の調子も上がります。会社などで寝る場所がないという人は、空いているトイレを見つけて、暫く目を閉じて座ってみるだけでもいいです」(横倉先生)
忙しい毎日の中でも、五感を意識する余裕をもつこと、脳に休憩時間を与えることが、実は脳にとって大切とのこと。
“脳のスイッチの切り替え“を意識しながら、上手にストレスをコントロールして、穏やかに過ごしていきたいものです。
更年期の不調は、ガマンせず上手に乗り越えていきましょう
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「更年期の症状が出てきたかな?と思ったら、年だから仕方がないとガマンせず、話を聞いてくれる先生を見つけてクリニックに行ってみましょう。そして五感を意識して過ごしてみてください。更年期の不調を治すだけでなく、症状悪化の予防にもなります。更年期障害ではなく幸年期生涯といえるよう、ぜひ “健幸” に過ごしてほしいと思います」と横倉先生。
更年期は女性なら誰にでも訪れるもの。
心身が変化する時期に、自分の体と心の声に耳を傾け、脳をリラックスさせながら、心から気持ちいいと五感で感じられることを積極的に取り入れていくことが大切なんですね。
「これから先の人生を穏やかに生きていく習慣を身につける、良いチャンスですよ。
健康な体と幸せを感じられる心、両方があって本当の"健幸"が得られます」
と横倉先生は説いています。
婦人科と心療内科の両方を診てもらえるような専門医の力を借りながら、そんな過ごし方ができれば、更年期を笑顔で乗り越えていくことができるのかもしれません。
監修医師プロフィール
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婦人科・心療内科医
横倉 恒雄 先生
医学博士。横倉クリニック(東京.田町)院長。
慶應義塾大学医学部産婦人科入局。東京都済生会中央病院産婦人科に勤務、同病院にて日本初の「健康外来」を創設。
病名がない不調を抱える患者さんにも常に寄り添った診察を心がけている。
クリニックで行っている講座も好評。
著書に『脳疲労に克つ』『心と体が軽くなる本物のダイエット』他
構成・文/夏野 新