【現役医師監修】歯周病が原因で脳梗塞に?!歯周病を防ぐ効果的な方法とは
「8020(ハチマルニイマル)運動」という言葉を聞いたことがありますか?
これは、厚生労働省と日本歯科医師会によって推進されている、「80歳になっても、自分の歯を20本以上保とう」という運動です。
20本以上の歯が残っていれば、食事も存分に楽しむことができます。
やっぱりできることなら、いつまでも自分の歯を保ちたいものですよね。
そこで特に気を付けたいのが「歯周病」。
歯周病は、歯を失ってしまう最も大きな原因です。
残念ながら日本では、「予防歯科」という概念が広まっておらず、歯周病によって歯を失ってしまう方がたくさん。
本日は、歯周病を防いで健康な歯を保つために心がけたいことをご紹介したいと思います。
歯を失う最大要因は、歯周病?
突然ですが、多くの方が歯を失ってしまう原因は、一体なんだと思いますか?
まず思いつくのが、「むし歯」ですよね。
たしかにむし歯も、歯を失ってしまう大きな要因のひとつです。
しかし、実はそれと同じくらい、もしくはそれ以上に大きな原因があります。
それがなにかというと、「歯周病」。
歯周病は、歯を失ってしまう原因ワースト1位。
たくさんの方(特に高齢者の方)が、歯周病によって歯を失ってしまっているのです。
歯周病は、生活習慣病?
糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化etc...
現代人が気を付けるべき「生活習慣病」には、さまざまな種類があります。
生活習慣病にならないよう、食事や運動などに気を付けているかもしれませんね。
でも、意外と忘れがちな生活習慣病があります。それこそが、歯周病。
実は、糖尿病などと同じく、歯周病も「生活習慣病」のひとつとして位置づけられているのをご存知でしたか?
生活習慣病を防ぐために食事に気をつかう、という方は多いかもしれませんが、生活習慣病を防ぐために歯のお手入れに気をつかう、という方は少ないのではないでしょうか。
そもそも歯周病ってなに?
そもそも、歯周病って一体どんなものなのかご存知ですか?
歯周病に打ち勝つには、敵を知ることが大事。まずは歯周病について勉強しましょう。
歯周病とは、細菌が感染することで起こってしまう、炎症性の疾患のことです。
歯と歯肉の間をしっかりと清掃できていないと、そこにプラーク(歯垢)が溜まっていきます。
この歯垢、実はただの汚れではなく、「細菌の温床」だということをご存知でしたか?
たった1mgの歯垢のなかに、なんと10億ちかくもの細菌が繁殖しているのです。
この歯垢を放っておくと、細菌たちが悪さをして歯肉が炎症を起こしてしまい、赤く腫れてしまいます。
それがさらに悪化すると、歯と歯肉のすき間が深く(歯周ポケット)なってしまい、歯を支えている歯槽骨が吸収されていきます。
最終的には、歯を支えることができなくなってしまい、歯が抜けてしまうことになります。
歯周病は全身に影響を及ぼす?
歯周病の怖いところは、その影響が歯だけにとどまらない、ということです。
実は、歯周病が全身の疾患に発展してしまうことがあるのです。
たとえば、歯周病によって以下のような疾患が進行または誘発される可能性があります。
(1)動脈硬化の進行
現段階では歯周病と動脈硬化の発生そのものが関係あるとされてはいないようですが、
動脈硬化が「進行してしまう恐れ」があると言われています。
歯周病の原因菌は、歯肉を通して血管の中に入ると、毒素や炎症性物質(サイトカイン)を産生したり、血液を凝固させると言われています。
それによって動脈硬化が悪化してしまう可能性があるようです。
(2)脳梗塞
さらに、歯周病菌が血液によって脳の血管まで届くと、そこでも血液を凝固させたり炎症を起こす可能性があります。
すると、血管内に血栓ができてしまい、脳梗塞の原因となり得ます。
(3)糖尿病
まったく関係なさそうな「糖尿病」にも、実は歯周病が関係しています。
歯周病菌は血管の中に入ると毒素を生み出すのですが、この毒素の影響で、インスリン(血糖値を下げるホルモン)のはたらきが阻害されてしまいます。
その結果、糖尿病が発症・進行してしまうのです。
上記はほんの一例。他にも、歯周病はさまざまな病気に関わっていると言われています。
こうやって見ると、歯周病は歯の健康を損なうだけでなく、全身の疾患を引き起こし、時には命の危険にも関わってくるということが分かりますね。
歯の健康を保つことは、全身の健康を保つということに繋がるのです。
私も歯周病?!簡単チェックリスト
歯周病を対策するには、まずは自分の状況を知る必要があります。
以下のチェックリストで当てはまる項目が多かった方は、すでに歯周病になりかけかも・・・?
まずはチェックをしてみましょう。
~ 歯周病チェックリスト ~
1、歯磨きをしているときに、よく出血する。
2、歯磨きをしても、口臭が気になる。
3、歯肉がムズムズする。
4、歯肉が痛い。
5、歯肉が赤く腫れている。
6、歯が伸びてきた気がする。
7、歯と歯の間のすき間が目立つようになってきた。
他にも、歯の揺れを感じたり、硬いものが噛みにくくなったり、起床時の口腔内のネバツキ、水がしみるなどもあります。
当てはまった項目が多い方は、歯周病になりかけている可能性があります。
今すぐ歯周病対策を講じる必要があります。
歯周病を防ぐ方法とは?!
では、こういった歯周病を防ぐために、私たちは一体どのようなことができるのでしょうか?
ここからは、歯周病を防ぐための具体的な方法をご紹介していきたいと思います。
歯周病を防ぐ方法(1)歯と歯肉の間をブラッシング
歯周病は、歯と歯肉の間にプラーク(歯垢)が溜まり、細菌が暴れることで起こってしまいます。
そこでまず重要となってくるのが、歯と歯肉の間にある歯垢を落とすことです。
歯ブラシをするとき、歯肉や歯に対して垂直に歯ブラシを当てていませんか?
それだと、歯と歯肉の間は磨けていません。
ブラシを歯と歯肉のすき間に45度の角度で当てるようにして、歯垢をかき出すイメージでしっかりとブラッシングしましょう。
まずはこれが基本中の基本です。
歯周病を防ぐうえで非常に重要なことなので、歯を磨く際は必ず意識するようにしましょう。
歯周病を防ぐ方法(2)他のオーラルケアアイテムも使う
実は、歯ブラシで磨くだけでは完璧に歯垢を取り除くことはできません。
次のようなオーラルケアアイテムを併用することで、よりきれいにすることができます。
・歯間ブラシ/デンタルフロス・・・歯ブラシが届かない、歯と歯の間の歯垢を取り除くことができる。
・うがい薬・・・殺菌効果があるものが多いため、細菌の繁殖を抑える効果が期待できる。
・口腔洗浄機・・・水圧によって歯垢をかきだすため、歯ブラシによる磨き残しをきれいにすることができる。
これらを併用しても完璧とまではいきませんが、歯ブラシだけで磨くより、各段にきれいにすることができます。
歯周病を防ぐ方法(3)定期的にクリーニングしてもらう
日本では未だ、「予防歯科」という考えが広まっていません。
「歯が痛くなってから歯医者に行く」という方が多いのではないでしょうか?
大事なのは、予防としてクリニックに通うということ。
歯と歯肉の間にたまった歯垢は、しばらくすると歯石に変わってしまい、歯磨きでは取れなくなってしまいます。
そういった歯石を取り除いてもらうためにも、定期的に歯科医院に通ってきれいにしてもらうようにしましょう。
この習慣が、歯周病を防ぐうえで非常に重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本日は、「歯周病」についてお話ししました。
歯周病は、ただ「歯肉が炎症を起こすだけ」というイメージの方も多いかもしれませんが、実は全身の健康に影響を与えるほどの、大きな危険をはらんでいます。
日ごろから正しいオーラルケアを心がけ、定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで歯周病を予防することができます。
80歳になっても20本以上の歯を保つことができるよう、今から歯周病対策を行ってみてはいかがでしょうか。
監修医師プロフィール
医療法人社団スタデン理事長
田中 和之 氏
"確かな技術・痛くない・待たせない・丁寧な説明"をポリシーに診療を行う医療法人社団スタデンの理事長。
審美歯科歴17年以上の経験を有し、審美歯科の症例数は5,000件を超えている。
勤務クリニック名:九段下スターデンタル