アゼライン酸は美容成分ではなく“医薬品成分” ?アゼライン酸の裏事情と期待できる効果を徹底解説

近年、オイリー肌やニキビでお悩みの方から高い人気を得ている美容成分、「アゼライン酸」。
ここ数年で突然ブームに火がつき、日本や韓国を初め、世界中の化粧品会社から続々とアゼライン酸が配合された化粧品が登場しています。
ですがこのアゼライン酸、実は“新しい成分ではない”ということをご存知でしたか?
海外では、なんと30年も前から使用されていた成分なのです!
ずっと前から存在していたアゼライン酸が、
なぜここ数年で突然ブームになったのか、本日はその理由を徹底解説。
なかなか語られないアゼライン酸の裏事情や、アゼライン酸に期待できる効果などについても詳しく解説していきたいと思います。
海外では30年も前から“医薬品”として処方されている成分

アゼライン酸(Azelaic Acid)は、小麦やライ麦、大麦などの穀類に含まれる自然由来のジカルボン酸の一種。
ここ数年、皮脂コントロール効果やニキビケア効果がある美容成分として話題になっており、アゼライン酸を配合した美容液やクリームなどがさまざまなメーカーから発売されていますよね。
実はこのアゼライン酸、海外ではずっと前から“ニキビの治療薬”として使われてきた成分。
ヨーロッパ・アメリカ・アジアなどをはじめとする世界80ヶ国で、ニキビを治療する「医薬品」として、30年近く前から皮膚科などで処方されてきたものなんです。
日本でアゼライン酸が知られてこなかった理由

しかし、日本で“アゼライン酸”という名前を聞くようになったのは、せいぜいこの2~3年程度。
なぜ日本では、これまでアゼライン酸の知名度が低かったのでしょうか?
理由(1)日本では医薬品として未承認の成分だから
その大きな理由のひとつは、
「日本ではアゼラインは医薬品成分として承認されていないから」です。
そう、30年も前から海外の多くの国ではニキビ治療薬として使われてきたにもかかわらず、不思議なことに日本では未だに医薬品として承認されていません。
日本でアゼライン酸が未承認な理由は明らかになってはいませんが、さまざまな理由が考えられます。
まず、日本は新しい医薬品の承認に慎重な傾向があります。
そのため「海外でアゼライン酸が承認されているから」といって、すぐに日本でも承認しようという流れにはならなかったのかもしれません。
また、新しい成分を医薬品成分として承認するには、莫大のコストと時間をかけて日本人を対象に臨床データ(治験)を取らなければなりません。
当時は、今と比べるとニキビを「病気」として皮膚科を受診する人が少ない傾向がありました。
仮にアゼライン酸が医薬品として承認されたとしても、そもそも受診する人が少なければ、採算が合わなくなってしまう可能性もあったのです。
これらはあくまでも推察にすぎませんが、アゼライン酸が日本で医薬品として承認されてこなかったのには、複合的な要因が絡んでいたのです。
こういった背景により、日本にはいまだにアゼライン酸のニキビ治療薬は存在しません。
理由(2)“医薬品的な成分”だから化粧品としての販売も難しかった

「医薬品として発売することができないなら、化粧水や美容液に配合して化粧品として発売すればよかったのでは?」
そう思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、アゼライン酸は化粧品として販売するのも難しい成分だったのです。
それはなぜかというと、“医薬品的な成分”だから。
そう、アゼライン酸は日本では医薬品として承認されていない一方、“医薬品のような性質を持つ成分である”というのは事実です。
(なんてったって、海外では医薬品として処方されているわけですからね。)
日本の法律(薬機法)では、化粧品の定義を「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つ(中略)ことが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」としています。
アゼライン酸を高濃度に配合した商品は、この“人体に対する作用が緩和なもの”という化粧品の原則からはずれてしまうので、一般の市場で化粧品として販売しようとすれば、厚生労働省などから指摘されてしまう可能性があります。
また、アゼライン酸は“刺激感”があることで知られている成分です。
そういった刺激感などのトラブルが起こった際の対応が必要なことも、なかなか市販の化粧品に配合できなかった理由のひとつであると考えられます。
そのため、これまで日本では、アゼライン酸を「医薬品」としても「化粧品」としても販売することが難しかったのです。
ロート製薬がアゼライン酸配合クリームの先駆けに
そういった事情の中、日本でアゼライン酸配合クリームの発売を実現したメーカーがあります。それが、ロート製薬です。
前述の通り、アゼライン酸を高濃度に配合したスキンケアアイテムは、お店などに流通する化粧品として発売することが困難でした。
そのため、ロート製薬は「クリニック専売品」という、医師の診察・管理のもと購入することができる商品として、アゼライン酸配合のクリームを発売しました。
(具体的な発売日は不明ですが、2013年時点での使用者の口コミを確認することができました。)
これは、アゼライン酸を20%という高濃度で配合した、ニキビでお悩みの方向けのスキンケアクリーム。
この商品の発売により、“アゼライン酸”という成分が日本でも少しずつ知られるようになっていきました。
しばらくの間、日本で手に入るアゼライン酸クリームはこのロート製薬の商品のみでした。
海外で始まったアゼライン酸コスメブーム

ようやくロート製薬からアゼライン酸入りのクリームが発売されたとはいえ、それでも当時は日本でアゼライン酸という成分を知っているのはごく一部の人に限られました。
そういった状況がしばらく続いていましたが、アゼライン酸が一躍大ブームになることになります。
そのきっかけとなったのが、海外で始まったアゼライン酸コスメブーム。
それまで海外の多くの国々ではアゼライン酸が医薬品として販売されていましたが、「日頃からアゼライン酸をスキンケアに取り入れたい」というニーズから、アゼライン酸を配合したスキンケアアイテムが登場するようになります。
有名なのは、カナダのコスメブランド「The Ordinary(ジ・オーディナリー)」より2016年頃に発売された、アゼライン酸が10%の濃度で配合されている美容液。
海外サイトのレビューなどでアゼライン酸が配合されたスキンケアアイテムはたちまち話題となり、しばらくしてその噂はSNSなどを通じて日本にも上陸するように。
日本でもアゼライン酸に対するニーズが高まり、2022年頃から、ロート製薬のアゼライン酸クリーム(クリニック専売品)の取り扱いが拡大。
さまざまな美容皮膚科で購入できるようになりました。
2023年頃からはインフルエンサーなどを中心にアゼライン酸についての発信が増え、一気に話題に。
さらにロート製薬はこの需要を受け、2024年に“市販向け”のアゼライン酸配合クリームをいよいよ発売。
これまではクリニック専売品としてのアゼライン酸クリームのみでしたが、一般市場向けの化粧品として発売できる仕様に調整したアゼライン酸クリームの発売をとうとう実現したのです。
この出来事は、美容業界に大きな激震を与えました。
これを皮切りに、アゼライン酸を配合した化粧品がさまざまなメーカーから発売されることとなります。
アゼライン酸の美容効果とは?

このように、さまざまな事情により“時間差”で日本にたどり着いたアゼライン酸。
では、アゼライン酸には一体どのような効果があるのでしょうか?
1. ニキビ・毛穴トラブルへの効果
アゼライン酸は、ニキビの原因菌である「アクネ菌」や「マラセチア菌(真菌)」の増殖を抑える抗菌作用を持ち、炎症性ニキビや赤ニキビに特に有効です。
また、角化異常(毛穴が詰まって角栓ができる)を抑える作用もあり、毛穴詰まりを予防し、白ニキビや黒ニキビの改善にも効果的です。
2. 美白・色素沈着改善
アゼライン酸には、メラニンの生成を抑制する作用があり、肝斑・炎症後色素沈着(PIH)・くすみにアプローチします。
特に、メラニン生成のカギとなる「チロシナーゼ」という酵素の働きを抑えることで、美白効果を発揮します。
トレチノインやハイドロキノンに比べるとマイルドですが、刺激が少なく、長期使用に向いています。
3. 赤ら顔(酒さ)への効果
酒さ(rosacea)治療にもアゼライン酸が広く使われており、炎症や赤みを鎮める効果があります。
血管拡張や皮膚のバリア機能低下による赤ら顔に対し、優しくアプローチできる成分です。
4. 皮脂抑制と肌のテカリ防止
アゼライン酸は皮脂の分泌を抑える作用もあるため、「肌のテカリが気になる…」という脂性肌の人にもおすすめです。
5. 肌のざらつき・テクスチャー改善
アゼライン酸は、角質層のターンオーバー(新陳代謝)を穏やかに促進する働きがあります。
一般的なピーリング成分(AHA・BHA)に比べて作用がマイルドで、肌への刺激を最小限に抑えつつ、ざらつきや毛穴の開きを改善。
肌のキメを整え、スキンケアの浸透力も高まるため、トータル的な美肌力アップにも貢献してくれます。
このように、アゼライン酸は「多機能」なのが大きな特徴。
いろいろな肌トラブルをケアすることができるということで、人気を集めています。
使い方のポイントと注意点
アゼライン酸はクリームやジェル、美容液などの形状で販売されています。
商品の選び方と使い方は、下記を参考にしてみてくださいね。
推奨濃度と商品選び
市販のアゼライン酸配合化粧品は、日本国内では濃度が低めに抑えられている傾向にあります(5〜10%程度)。
海外ブランドでは20%前後の高濃度製品もありますが、
初めて使用する方はまずは5〜10%前後から試してみることをおすすめします。
使用頻度と注意点
はじめは週2〜3回の使用からスタートし、肌の様子を見ながら徐々に使用頻度を上げるのがポイント。
アゼライン酸は、使い初めに肌が赤くなったり、ピリピリしたりなどの刺激が起こることがあります。
しかし、これは通常一時的なものなので、慌てる必要はありません。
多くの場合、1~2週間ほどで慣れてきます。
赤みや刺激が強いと感じた場合は、使用回数を減らす、塗る量を減らすなどして、調整してみましょう。
また、アゼライン酸自体に光毒性(それを塗った状態で紫外線に当たることで肌に刺激や炎症を引き起こす現象)はありませんが、肌のターンオーバーを促す関係で一時的に肌が敏感になることもあるため、日中はUVケアを徹底することが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本日は、なかなか語られないアゼライン酸の裏事情や、アゼライン酸が大ブームになった背景、そしてアゼライン酸の効果や注意点などについて解説しました。
アゼライン酸入りの化粧品は最近よく見かけるけど、
そんな背景がある成分だとは知らなかった・・・という方も多いのではないでしょうか。
新しい成分のようで、実は歴史が長いアゼライン酸。
ニキビや皮脂でお悩みの方には特におすすめの成分なので、ぜひ取り入れてみてくださいね。