LGBTをご存じですか?歴史や日本での実情をご紹介。
ホモフォビアとは?
ホモフォビアとはHomo+恐怖を意味する接尾辞 -phobiaが付いた言葉。
元々は「Homo-sapiens(人間)に対する嫌悪や恐怖」「人間嫌い」を意味する言葉だったのですが、
現在は「Homo-seuxual(同性愛者)やセクシャルマイノリティに対する嫌悪や恐怖」の事を意味します。
この同性愛者に対する嫌悪、拒絶、偏見は同性愛を悪とする宗教観が影響している事が多いという事を頭に入れておきましょう。
LGBTである事で直面する可能性がある差別
LGBT当事者は嫌悪感を持つ者から虐めや暴言、暴力に直面する可能性があり、時に殺人にまで及ぶ事があります。同性愛行為が禁止され、法律によって体罰や死刑になる国がある事も知っておかなければならないでしょう。差別や偏見がどのような事件を引き起こすのかを少しご紹介させて頂きます。
ハーヴェイ・ミルク暗殺事件
1977年、アメリカ初のゲイであることを公表し選ばれた市会議員ハーヴェイ・ミルク氏は就任から1年も経た無いうちに同僚議員のダン・ホワイトによって射殺されました。このホワイト氏は7年8ヶ月の禁固刑を宣告されましたが、あまりに寛大すぎる判決として非難されました。
ハーヴェイ・ミルク氏の事件とは異なりますが、裁判時に同性愛者に対する暴力や拷問、殺害した者を弁護するために行われる抗弁としてゲイ・パニック・ディフェンスというものがあります。これは被告人が同性愛者による性的な誘いを受け、暴力をふるうような心理状態に陥った事を主張し、寛大な刑罰を可能にするものです。同性愛者側が非暴力な立場で殺害されたとしても懲役が1年であったり、免訴されたといった事例があります。過去の事のように思えますが、この抗弁を禁止しているところは少なく、ディフェンスではなくヘイトクライムだという声が上がっています。
オーランド銃乱射事件
2016年、フロリダ州のゲイナイトクラブで男性が自動小銃を乱射し容疑者を含む50人が死亡、53人が負傷した銃乱射事件がありました。容疑者はこのナイトクラブに同性愛者が集うことを知っており、同性愛者を嫌悪する発言が目立っていたため、ヘイトクライムである可能性が指摘されています。当時、アメリカ大統領のオバマ氏は「テロ(恐怖)とヘイト(憎悪)の行為」と強く非難し、銃規制強化の必要性も訴えました。
ブルネイのシャリア法適用
イスラム教徒が多数を占めるブルネイは2014年5月、東南アジアで初めてシャリア法を適用する国となり、2019年4月3日から完全施行されました。このシャリア法というのは不倫や同性間の性交渉を死刑とするものです。ボルキア国王は高級ホテルを運営するドーチェスター・コレクションを所有しており、米俳優ジョージ・クルーニー氏をはじめとする著名人がドーチェスター・コレクション傘下の高級ホテルのボイコット運動を始め、国連や世界各国の政府、人権団体から強い抗議の声が上がっています。
少し宗教に関する事が出てきたので、同性愛を罪とする宗教に触れて行こうと思います。
同性愛と宗教について
実際、同性愛を罪とする宗教は多く存在します。日本では宗教に熱心な方が他の国と比べて少ない為、宗教が思考にどのような影響を及ぼすのか理解しにくいかもしれません。しかし、世界的に宗教は重要であり、信者の倫理観や思考に強く影響を及ぼしています。それ故、同性愛は悪い事と捉えられてしまう傾向があり、差別の意識を持っている人達からは誹謗中傷の理由として宗教が利用されてしまうのです。
キリスト教
世界三大宗教の1つであり、世界で一番信者の多いキリスト教は同性愛を罪とする宗教です。実際、同性愛者に対し厳しい迫害を行い、多くの者が処刑されました。この同性愛が罪だという考えはダンテの神曲の中に出てくるダンテの師(同性愛者)が地獄にいる場面からもわかります。今でも同性愛者が異性愛者になる為の療法として用いられるコンバージョン・セラピーの推進者は宗教的正当性を主張するキリスト教根本主義団体等の組織である傾向があります。
イスラム教
世界三大宗教の1つで、世界で二番目に信者の多いイスラム教も同性愛を罪としています。イスラム教の教義の中に男性に性欲を抱く人々を非難する記述がある為、同性愛が処罰の対象となっています。現在でもイスラム教信者の多い国では同性愛者を死刑にする国や地域が存在するのですが、これは比較的近代になってから強まった傾向のようです。美少年に魅惑されることは自然なもので、抑制されていれば罪としない要素がイスラム教には存在していた為、少年愛を題材にした詩や芸術が多く残っており、ペルシアやオスマン帝国では同性愛文化が花開いた歴史があります。実際、同性愛に寛容な地域が少なくなかったと伝えられています。
仏教
世界三大宗教の残りの1つ、仏教。戒律に対する考え方が他の宗教と異なる部分があり比較が難しいが、やはり仏教でも男色者は地獄に落ちるという記述を見つける事が出来ます。「不邪淫戒」として、僧侶や出家していない者であれば淫らで邪悪な愛欲に支配されておらず、迷惑にならければ基本的には良しとされています。また、他の国の仏教では駄目な事も日本の仏教では良しとされている事もあり、信仰する国によって解釈が様々です。
同性愛を良しとしない教えが大半でしたね。昔の考え方だから仕方ないと思ってしまうかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。古代ギリシアでは同性愛は単なる恋愛・性愛のバリエーションの1つであり、同性愛者という概念が存在しなかったといわれています。プラトニック・ラブという言葉も男色家であったプラトンの「肉体に惹かれる愛よりも、精神に惹かれる愛の方が優れている」という考え方から作られています。「〜はいけない事」というルールが多く存在する現代よりも古代の方が寛容な部分があったのかもしれません。
まとめ
LGBTの抱える問題や歴史を知っていかがだったでしょうか?日本では大きな事件として取り上げられる事は多くありませんが、現実にLGBTである事から誹謗中傷され、虐めや暴力、殺人といった事件が起きています。人として生まれても人として生きる事が出来ない社会の在り方に疑問を抱き、差別や偏見は人権侵害だと考えるなら教育の重要性を感じる事が出来るでしょう。今回の記事でLGBTへの理解を深め、考えるキッカケとなれば嬉しく思います。