【医師監修】日本の避妊は遅れている?外国の避妊事情を徹底解説
みなさんは、セックスをするときにどのような「避妊」をしていますか?
現在、日本ではコンドームを使用した避妊方法が主流ですが、海外ではコンドーム以外の避妊法がメジャーだそうです。
そこで今回は、産婦人科クリニックで長年の経験と実績をお持ちの医師監修のもと、日本国外の避妊方法をご解説していきます。
日本だけでなく海外の性事情を学んでいきましょう。
日本でメジャーな避妊の種類と方法
まず、避妊の種類についてご紹介します。
先述したように、日本ではコンドームの使用がメジャーな避妊となっています。
実際に「一般社団法人 日本家族計画協会」が「主な避妊方法について」のアンケートを取ったところ、「コンドーム」と回答した人が全体の85.5%に上っています。
その他の避妊方法としては、「腟外射精」(16.0%)、「オギノ式避妊法」(6.1%)、「経口避妊薬(ピル)」(正しく使用した場合0.3%)という結果になりました。
これらの避妊方法以外にも避妊方法は多数存在します。
ここからは1つずつその特徴と使用方法を紹介していきます。
コンドーム
最も一般的な避妊方法として知られているコンドームは、現在では薬局だけでなくコンビニやスーパー、ネットでも販売されており、リーズナブルで手に入りやすい避妊方法として親しまれています。
そもそもコンドームとは、男性の性器に被せるゴム状の製品です。
腟内で射精したとしてもゴムの中に精液が溜まるので、避妊の効果があります。
メリットとしてはコンドームにより、性器同士の直接の接触を避けることができるので、「性感染症」の予防ができるという点です。
先述したように、誰でも簡単に入手できるという点が最大の特徴です。
しかし、装着の仕方によっては腟内でコンドームが外れてしまったり、ゴムが破損してしまうというアクシデントも予想できます。
また大体1年間の失敗率(妊娠率)は18%に上るという結果も発表されています。
OC
OCは正式名称で「低用量経口薬・低用量ピル」と呼ばれているお薬です。
女性ホルモンを含んでいるお薬で、正しく服用することで避妊率がグッとアップします。
失敗率はコンドームよりも低い0.3%を誇っていますが、OCの普及率は著しくないのが現状です。
同調査で「ピルの認知度」を問いかけたところ、「よく知っている」「ある程度知っている」と回答した女性は全体の64.9%ほど。
続けて、「ピルの使用意向」について問いかけたところ、71.4%の女性が「使いたくない」と回答していました。
実際にSNS上でも
「簡単に避妊ができるのはいいけど、副作用が気になる」
「毎日飲まなくちゃいけないから続けられるか不安」
「コンドームを付けないで本当に避妊ができるのか半信半疑なところがある」
といった声があります。
しかし、現在出回っているピルは女性の多くが思っているピルのイメージを一掃するほど大きく進化を遂げています。
まず、副作用(吐き気・不正出血・頭痛)などは、出やすい人と出にくい人がいます。
およそ10人に1人程度の割合で出現します。
出やすい人でもOCを飲み続ければ、平均2~3ヶ月で収まると言われています。
また、コンドームと違って男性と話し合う必要なく自身の判断で服用が可能なので、相手を選ばずに避妊が可能です。
さらに、OCには生理周期を改善したり、月経の量を軽くしたり、生理を軽減する、子宮内膜症の抑制効果、貧血の改善、月経前緊張症の改善、プレ更年期の改善、ニキビの改善をする効果もあります。
IUSとIUD
「IUS(ミレーナ)」と「IUD」は初めて聞く人も多いかもしれません。
この2つは、子宮の中に直接器具を入れるタイプの避妊方法です。
「IUS」はIntrauterine Systemの略で、黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する器具の名称です。
一度装着すると最長で5年間は避妊の効果があり、生理の量も少なくなることが特徴です。
一方「IUD」はIntrauterine deviceの略で、避妊目的で子宮内に装着する器具のことです。
出産経験があり、妊娠を望まない女性に適していると言われています。
「IUD」には銅が付いているタイプも存在しており、銅がついていると避妊効果がアップしますよ。
「IUS」と「IUD」はどちらも婦人科での診察・処方が必要な器具です。
興味のある方はまずお近くの婦人科にて避妊の相談をしてみてくださいね。
緊急避妊薬(アフターピル)
望まない妊娠を回避する最後の砦として残されているのは、「緊急避妊薬」です。
緊急避妊薬は
「避妊に失敗した」
「男性だけの意思で避妊がされなかった性交」
「突然レイプされてしまった」
などのイレギュラーな時に登場するお薬です。
性交後72時間以内に黄体ホルモンを含んだお薬を服用することで排卵を抑制し、妊娠が成立する確率を減少させてくれます。
特に24時間以内が妊娠阻止率が高くなります。
しかし、避妊率は全体でみると80%ほどになります。
人によっては吐き気や頭痛などの副作用もあるので、あくまで最後の砦として覚えておいてください。
【番外編】これは避妊じゃないの?
多くの人が勘違いしていますが、「膣外射精」は適切な避妊ではありません。
そもそも「膣外射精」とは、男性の性器を膣にそのまま挿入して、射精する寸前に性器を抜く方法です。
行っている人は多いものの性器を抜くタイミングが難しいことから4~5人に1人は妊娠するとも言われています。
また、勃起している男性の性器からは、射精の前でも「カウパー液(我慢汁)」と呼ばれる液が出ています。
カウパー液には微量ではありますが精子が含まれているので、「外出ししているから大丈夫」というのは間違った認識になります。
海外でメジャーな避妊
日本で行われているメジャーな避妊方法は、上記でご紹介していきました。
しかし、海外では日本とは異なる考え方をしているよう。
そこでここからは、海外の避妊方法について詳しく学んでいきます。
海外ではピル内服がメジャーだった!
結論から言うと、海外でメジャーな避妊方法は「ピル(低用量経口薬)」です。
実際に欧米諸国(フランス・ドイツ・イギリス・スウェーデン)では、半数近くの女性がピルを服用しています。
特にフランスではピルを飲んでいるのが常識という考えです。
フランスでは14歳ごろから、ディスコやパーティーで夜に外出する機会が増えていきます。
そのため、誕生日プレゼントや両親からの贈り物でピルをもらうこともあります。
また、フランスではピルにも保険が適用され、自己負担は35%ほど。
約600円でピルが手に入るので、若い世代はほとんどの人がピルを服用しています。
一方、日本で主流のコンドームは使用率は高くありません。
コンドームが自己負担での処方になるので、フランス女子のほとんどはピルを内服しています。
ドイツは日本よりも積極的に性教育が行われています。
そのため、しっかりとした性の知識がついており、コンドームよりも避妊率の高いピルを選択する女性がメジャーとなっています。
若い世代と高齢女性の避妊法の違い
世界で避妊方法を比べてみると、日本人女性が一貫してどの世代もコンドームを使用しているのに対して、海外で30代あたりから主流になってくるのが「避妊手術」です。
避妊手術とは卵子や精子の通り道をふさいで、受精できないようにする手術のこと。
女性の場合は、卵管(卵子の通り道となる管)を糸で縛ることで受精できないようにします。
しかし、避妊手術は一度手術すると元に戻すことが困難という難点もあります。
出産を経験し、これ以上の出産を望まない女性などが多く手術を受けることから、年齢が上がるにつれて同避妊法を選ぶ女性が増加していきます。
男性が避妊手術を受ける場合、精管(精子の通り道となる管)を糸で結びます。
女性の避妊手術が入院必須なのに対して、男性は日帰りで受けられるので欧米をはじめとした海外ではメジャーな避妊法として親しまれているのです。
【番外編】日本のアフターピルが変わる!
現在、アフターピルは婦人科の受診が必要なお薬として提供されています。
しかし、性交後72時間以内に病院へ受診してピルを処方してもらうのは、連休中だと難しいかもしれません。
そこで、厚生労働省で協議されたのが「アフターピルの市販化」について。
議題としては「婦人科に受診しなくてもアフターピルが手に入る」という案が出されましたが、
「安易に販売がされてしまうと悪用や濫用が懸念される」
「失敗・成功の判断がしにくい」
「仮に効かなかった時の責任の所在が分からなくなる」
といった理由で、市販化は一旦見送られました。
責任の所在や悪用・濫用を防ぐ手段が発案されれば、市販化も目前となるアフターピル。
「婦人科を受診するのに抵抗がある」
「72時間以内にアフターピルを飲まなかったから妊娠してしまった」
という女性を減らすためにも、アフターピルの市販化は必要不可欠なものかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、避妊をテーマに方法や種類などを詳しく紹介してまいりました。
日本だけでなく世界へ目を向けてみると、私たちが知っているよりもっと多くの避妊方法が存在しています。
また、海外では日本人よりも避妊に対する意識や知識があります。
「女性自ら避妊を選択する権利」を存分に活用しているので、日本よりも避妊率や妊娠に対する意識が高いということが分かりました。
「避妊を選択する権利」は当然、日本の女性にもある権利です。
今一度、望まない妊娠や新しい命の誕生の意味を考えて、避妊方法を選択してみてくださいね。
監修医師プロフィール
医療法人社団都筑
つづきレディスクリニック 院長 吉岡 範人
[経歴]
1978年生まれ。千葉県出身。
2005年、聖マリアンナ医科大学大学院を卒業。同大学初期臨床研修センター、産婦人科に入局。
16年間の医局勤務中、約2年間にわたりカナダ・バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学へ留学。がんの研究に従事。
2019年に事業を引き継ぐ形でつづきレディースクリニックの院長に就任。
その後、自らの発案で訪問医療を新たにスタートさせるなど、枠に捉われない多角的な医療サービスを促進。大きな注目を集めている。
[保有資格]
日本産科婦人科学会専門医
日本産科婦人科学会指導医
日本体育協会認定スポーツドクター
母体保護法指定医
婦人科腫瘍専門医
[クリニック]