【現役医師監修】入れ歯の洗浄方法、間違ってない?正しいお手入れとは
ふだん入れ歯を使われている方、もしくはご家族が入れ歯を使われている方。
入れ歯の洗浄は、正しく行えていますか?
コンタクトレンズを毎日消毒・洗浄するのと同じように、入れ歯も正しい方法でキレイにしておかないと、汚れがたまり、雑菌が繁殖してしまいます。
入れ歯に溜まった汚れは「デンチャープラーク」と呼ばれており、これを放置しておくと口臭や歯周病の原因にも。
入れ歯は、日ごろから正しく洗浄することが重要です。
「入れ歯なんて洗浄剤に浸けておけばいいんじゃないの?」なーんて方は要注意。
洗浄剤だけでは、汚れは落ち切りません。
不衛生な入れ歯を使用することで「口腔カンジダ症」を発症する可能性も?!
本日は、入れ歯の間違ったお手入れによるリスクと、正しいお手入れ方法をご紹介したいと思います。
INDEX
入れ歯のお手入れ、ちゃんとできてる?
雑菌が繁殖しやすい、入れ歯のお手入れ。
あなたはちゃんと正しい方法で行えていますか?
「入れ歯は洗浄剤に浸けておしまい」という方は要注意。
そんな洗い方だと、きちんと汚れが落としきれていないかも?
汚れが残った入れ歯を使用し続けていると、さまざまなリスクがあります。
特に、入れ歯を使用するのは抵抗力が弱いとされるご年配の方が多いですから、不衛生な入れ歯を使うことがないよう、常に清潔を心がける必要があります。
入れ歯が不衛生だとこんな危険性も・・・
とはいえ、入れ歯が不衛生な状態だと、一体どのようなリスクがあるのでしょうか?
「むし歯になる歯も無いんだから、怖いものなし!」なんてたかをくくっていてはいけません。
実は、入れ歯の洗浄がきちんと行えていないと、「デンチャープラーク(入れ歯の歯垢)」が溜まってしまいます。
デンチャープラークの中は、細菌の温床。
口の中でさまざまな悪さをし、場合によっては命の危険を脅かすこともあるのです。
たとえば、以下のようなリスクが挙げられます。
不衛生な入れ歯を使う危険性(1)口腔カンジダを引き起こす
カンジダとは、口腔内に常在している真菌(カビ)のこと。
若い人の場合は免疫力があるため、このカンジダ菌が増えすぎてしまうということはほとんどありません。
しかし、免疫力が落ちてしまいがちな高齢者の場合、
カンジダ菌の繁殖を抑制することができず、口腔内で異常繁殖してしまうことがあります。
そしてその大きな原因が「不衛生な入れ歯の使用」であると言われています。
入れ歯の材質である「レジン」は、カンジダ菌が非常に付着しやすいと言われています。
そのため、天然の歯以上に清潔を心がけていないと、カンジダ菌が繁殖してしまいやすいのです。
では、口腔カンジダ症になると、一体どんなことが起こるのでしょうか?
ひとことで言うと、「口の中がカビだらけになってしまう」ということです。
まず、口腔内の粘膜や舌に、白いコケのようなものがびっしりと現れます。
これをはがそうとすると、出血したり、ヒリヒリしたりしてしまいます。
さらに、舌の表面が腫れて萎縮する、口腔内に違和感を感じる、味覚がおかしくなる、口内炎ができる、と症状はさまざま。
カビがどんどん体を蝕んでいってしまうのです。
口腔カンジダ症は抗真菌薬で治療することが可能ですが、まず何より大事なのは「予防」。
日ごろから入れ歯をキレイにして、カンジダ菌が異常繁殖しないように気を付けましょう。
不衛生な入れ歯を使う危険性(2)誤嚥性肺炎を引き起こす
それだけではありません。
実は、入れ歯の不衛生によって「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を引き起こしてしまうことがあるのです。
肺炎は、日本人の主要な死因のひとつ。
つまり、入れ歯の不衛生が命の危険につながる可能性があるということです。
先ほど述べたカンジダ菌を含め、不衛生な入れ歯には、さまざまな菌や真菌が繁殖しやすくなっています。
そういった菌をたくさん含んだ唾液がふとした拍子に肺にはいってしまったとき、肺の中で炎症が起こり、いわゆる「肺炎」が引き起こされてしまうのです。
特に高齢者の場合は注意が必要。
健康な方の場合、多少唾液を誤嚥(ごえん)してしまっても、すぐにむせて吐き出すことができますが、
機能が衰退している高齢者の場合、誤嚥したままになってしまうのです。
肺炎を予防するためにも、まずは入れ歯を清潔にすることが非常に重要です。
入れ歯の間違ったお手入れ法
このように、不衛生な入れ歯を使用することがいかに危険なことなのかお分かりになったのではないでしょうか?
こういったリスクを防ぐためにまず大事なのは、入れ歯の洗浄方法を見直すこと。
間違った方法で入れ歯を洗浄している方は多くいらっしゃいます。
まずは、間違っている方法で入れ歯を洗っていないか確認してみましょう。
以下に挙げるのは、すべてNGな洗浄方法です。
自分も以下のような方法で入れ歯を洗っていないか、チェックしてみましょう。
入れ歯の間違ったお手入れ法(1)はずさずに磨いている
自分の歯を磨くのと同じように、入れ歯を口にいれたまま磨いているという方。
それは残念ながら、間違った洗浄法です。
歯に着けたままですと、入れ歯の「歯」の部分しか磨けておらず、床下粘膜(しょうかねんまく)、つまり口内に接着する面をきれいにすることができません。
その部分に細菌が繁殖してしまう可能性もあるので、入れ歯を洗浄するときは必ず一旦はずし、洗浄するようにしましょう。
入れ歯の間違ったお手入れ方法(2)洗浄液に浸けるだけ
また、「歯ブラシは使わず、入れ歯用洗浄剤に浸けておしまい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
たしかに、入れ歯用の洗浄剤は酵素などの力によって汚れを落とすのに優れています。
しかし、「食べカスを取る」「歯垢をかきだす」などの「物理的な」洗浄を行うことはできません。
そのため、洗浄剤だけで済ませようとするのはいけません。
入れ歯の間違ったお手入れ方法(3)熱湯や漂白剤を使用している
入れ歯をキレイにしようと、熱湯で洗ったり、漂白剤を使用して洗ってはいませんか?
これらは、入れ歯の「変色」や「変形」を引き起こしてしまう可能性があります。
最悪の場合、入れ歯の形が合わなくなって使用できなくなってしまうこともあるので、熱湯や漂白剤は使用しないようにしましょう。
入れ歯の間違ったお手入れ方法(4)市販の歯磨き粉を使用している
意外とやってしまいがちなのが、市販の歯磨き粉を使って入れ歯を磨いてしまう、という間違い。
市販の歯磨き粉には研磨剤が含まれていることが多いため、傷つきやすい入れ歯に使用してしまうと入れ歯がキズだらけになってしまいます。
入れ歯に傷がつくと歯垢が溜まりやすくなってしまうため、市販の歯磨き粉は使用せず、必ず入れ歯専用の歯磨き粉を使用するようにしましょう。
入れ歯の正しいお手入れ方法
さて、入れ歯のお手入れの注意点が分かったところで、正しい洗浄法を見ていきましょう。
とはいっても、そんなに難しくはありません。入れ歯の洗浄方法は、たったの3ステップです。
ステップ(1)入れ歯用歯ブラシで磨く
口から入れ歯を取り外したら、まずは入れ歯用の歯ブラシを使って隅々まで磨くようにしましょう。その際、入れ歯用の歯磨き粉を使用してください。
入れ歯表面に溜まる「デンチャープラーク」や「バイオフィルム」をこすり落とすことができます。
歯と歯の間、歯肉部分、金具部分など、隅々まで磨くことができたら、水で洗い流しましょう。
ステップ(2)入れ歯用洗浄剤に浸け置き
歯ブラシでキレイに磨くことができたら、続いて入れ歯洗浄剤で浸け置き洗いをしておきましょう。
金属がついている入れ歯には、部分入れ歯用の洗浄剤をしないと金属が変色することがあるので気を付けてください。
入れ歯洗浄剤には、口の中で悪さをする菌を殺菌したり、デンチャープラークを浮かせて除去しやすくします。
ステップ(3)入れ歯用歯ブラシでもう一度磨く
浸け置きが終わったら、最後に歯ブラシでもう一度きれいにこすり洗いをします。
歯磨き粉はつけなくても大丈夫です。
そうすることで、洗浄剤によって浮かび上がったプラークや微生物をしっかりと除去することができます。
これが一連の流れです。
この3ステップを行うことで、汚れの落ち具合が断然違います。
最初は少し手間に感じるかもしれませんが、習慣にして入れ歯を常に清潔に保つようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本日は、「入れ歯のお手入れ方法」についてお話ししました。
意外と間違えがちな、入れ歯のお手入れ。
不衛生な入れ歯を使用すると、深刻な健康被害につながる恐れがあります。
常に入れ歯をきれいに保って、口腔内を清潔に保ちましょう。
監修医師プロフィール
医療法人社団スタデン理事長
田中 和之 氏
"確かな技術・痛くない・待たせない・丁寧な説明"をポリシーに診療を行う医療法人社団スタデンの理事長。
審美歯科歴17年以上の経験を有し、審美歯科の症例数は5,000件を超えている。
勤務クリニック名:九段下スターデンタル