【医師監修】話題沸騰!ケトン食ってどんな食事法?効果や適切な食材を紹介!

最終更新日:
【医師監修】話題沸騰!ケトン食ってどんな食事法?効果や適切な食材を紹介!

健康を意識したさまざまな食事法のなかでも、最近注目が高まっている「ケトン食」

特定の病気に対する食事療法として医療機関で扱われているほか、糖質制限によりいわゆる脂肪の燃えやすい体を作るケトジェニックダイエットにおける食事法としても知られています。

 

本記事ではケトン食の仕組みや効果、ケトン食にぴったりな食材について解説します。

自分に合った健康的な食事法を模索中の方は、ぜひ参考にしてください。

ケトン食とは?仕組み・健康効果を解説

ケトン食とは?仕組み・健康効果を解説

ケトン食はケトン体(脳にエネルギーを送るために肝臓で生成される脂肪酸から作られる物質)を利用した食事法です。

 

その歴史は古く、紀元前に古代ギリシャの医師ヒポクラテスがてんかん治療に取り入れたことが始まりといわれています。

 

少しケトン食の歴史や保険償還されるまでの経緯に関して詳細を追加すると、ヒポクラテスが活躍した古代ギリシャ時代はてんかん患者の治療は絶食と祈りだけでした。2日程度絶食すると、徐々に血液中のケトン体が上昇してケトン体がエネルギー源として使用されることで中枢神経の興奮を抑える効果が出てくることで、てんかん発作の頻度が低下することが認められました。

 

この治療を1921年になって蘇らせたのは、米国のMayo clinicに勤務していたWilderという医師でした。彼はてんかんの患者さんにケトン食という新たな食事療法を開発しました。このケトン食によっててんかん発作軽減の効果が報告され、ケトン食は正式に治療手段として認められるようになったのです。この頃の初期のケトン食は、抗てんかん薬が開発されると徐々に衰退していき、一時は医療界から忘れられた存在でした。しかし、抗てんかん薬が効かない難治性の患者さんにケトン食を試したところ、臨床効果が報告されるようになりました。詳細は、1997年の『First Do No Harm』という映画の中で、てんかんの子供に応用したケトン食の治療が描かれており、当時全米で話題になりました。

 

現在では、難治性てんかんの一つの治療選択肢として再評価されるようになりました。また国内においても2016年に厚生労働省の認可を受け、てんかんに対する食事療法として保険適応となっています。まずはケトン食の仕組みや治療に有効であると認められている病気、ケトン食によって得られる健康効果についてご紹介します。

ケトン食の仕組み

ケトン食で摂取するのは、糖質量を抑え良質な脂質の量を増やした「低糖質・高脂肪」の食事です。

ケトン体を作りやすい脂肪の摂取量を増やすことで、通常エネルギー源となるブドウ糖(糖質)に変わってケトン体が脳や体のエネルギー源として使われます。

 

ケトン食では、三大栄養素(脂質・炭水化物・タンパク質)のバランスを「ケトン比」と呼ばれる比率で算出します。

厚生労働省が2020年に公表しているエネルギー産生栄養素バランス(いわゆる理想とされるPFCバランス)と比較してみましょう。※18歳~29歳の数値を参照

ケトン食の仕組み

ケトン比では脂質:タンパク質+炭水化物(糖質)が2:1または3:1となり、脂質割合が非常に高いことがわかりますね。

ケトン食が有効とされる病気

ケトン食は以下のような病気の治療法として効果が期待できるとされています。

(参考文献も併せてご紹介いたします。)

 

・難治性てんかん

・がん ※研究段階

・アルツハイマー ※研究段階

 

・先天性代謝異常( グルコース・トランスポーター1型欠損症)

・2型糖尿病 ※研究段階

・脂質異常症 ※研究段階

 

Xiaojie Yuan et al. ,Effect of the ketogenic diet on glycemic control, insulin resistance, and lipid metabolism in patients with T2DM: a systematic review and meta-analysis.Nutr Diabetes. 2020; 10: 38.

 

・多発性硬化症 ※研究段階

 

Lina Samira Bahr et al.Ketogenic diet and fasting diet as Nutritional Approaches in Multiple Sclerosis (NAMS): protocol of a randomized controlled study.Trials. 2020; 21: 3.

 

・気分障害(双極性障害) ※研究段階

 

Elisa Brietzke et al.Ketogenic diet as a metabolic therapy for mood disorders: Evidence and developments.Neurosci Biobehav Rev. 2018 Nov;94:11-16.

 

 ・統合失調症 ※研究段階

 

Zoltán Sarnyai et al.Ketogenic diet for schizophrenia clinical implication Current Opinion in Psychiatry , 2019.  32(5):p 394-401

 

 ・睡眠障害 ※研究段階

 

Luigi Barrea et al.Is there a relationship between the ketogenic diet and sleep disorders?

Int J Food Sci Nutr.2022 年 5 月;73(3):285-295

 

特に、てんかん治療ではケトン食による食事療法が保険適用となっており、高い抗けいれん作用を持ちながら眠気や鎮静作用などの副作用が少ないとして、小児てんかんの治療にも使われています。

期待できる健康効果

ケトン食には以下のような健康・美容効果も期待できるとされています。

 

・体重減少

・内臓脂肪蓄積の減少

・食欲のコントロール

・尋常性ざ瘡(ニキビ)の予防

 

 Daren A. Fomin et al.The ketogenic diet and dermatology: a primer on current literature

Cutis. 2020 January;105(01):40-43

 

もともとは食事療法の一種であり、ケトン比に従った厳しい制限を伴うケトン食。

健康効果を目的として日常に取り入れる場合は、体への負担を考慮し、「脂質>糖質 を基本とした食事管理」という認識で取り組むのがよいでしょう。

ケトン食のリスク

また、ケトン食の”リスク”に関しては下記論文からまとめておきます。

 

てんかん治療に使用されるケトジェニックダイエットは、特に食事療法後の最初の数日から数週間以内に、疲労、頭痛、吐き気、便秘、低血糖、アシドーシスを引き起こす可能性があります。また、脱水症、肝炎、膵炎、高トリグリセリド血症、高尿酸血症、高コレステロール血症、低マグネシウム血症、および低ナトリウム血症も発生する可能性があります。

 

オンライン フォーラムのユーザー 300 人を対象とした研究では、自己管理するケトジェニック ダイエットには、頭痛、疲労、吐き気、めまい、頭のもやもや感、胃腸の不快感など、頻繁に「ケト インフルエンザ」と呼ばれる一時的な症状群が伴う可能性があることが判明しました。エネルギー、失神感、心拍の変化。持久系アスリートでは、3.5 週間のケトジェニックダイエットにより、骨のモデリングとリモデリングのマーカーに悪影響が生じました 。

 

長期的な影響には、骨密度の低下、腎結石、心筋症、貧血、視神経の神経障害などが含まれる可能性があります 。ケトジェニックダイエットは長期忍容性が低く、多くの人にとって持続可能ではありません。炭水化物の少ない食事は、全死因による死亡リスクの増加とも関連しています  。

 

Lee Crosby et al.Ketogenic Diets and Chronic Disease: Weighing the Benefits Against the Risks.Front. Nutr., 16 July 2022

 

治療の一環として行う場合には医師や栄養士等の指導を受けながら時には入院してケトン食を開始していきますが、ダイエットや美容目的で行う場合はすべて自己管理となるでしょう。

過剰な制限には注意をし上記のような症状があらわれた場合は一旦中止し様子をみることをおすすめします。

具体的なケトン食の進め方

さて、ここからは具体的なケトン食の進め方を解説させていただきます。

 

急に高脂肪食であるケトン食を開始すると、胸やけや嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状が出現し、ケトン食の継続が難しくなることがあります。ケトン比を 1:1→2:1→ 2.5:1→3:1など、少しずつ脂質量を増やしていくよう食事内容を組み立てていくことが 推奨されます。 基礎疾患のある方は最終的なケトン比は医師と相談し決定します。

 

次にケトン比の計算方法に関して説明していきます。最初にも説明した通り、脂質はケトン体を作りやすく、糖質はケトン体を消す働きをします。 たんぱく質はその中間として作用します。その性質を利用し、脂質を多くして、糖質を少なくすることで、効率よく体内にケトン体を作り出すことができます。 脂質、たんぱく質、糖質における、ケトンを作る物質(向ケトン物質:K)と、ケトンを 消す物質(反ケトン物質:AK)の比と、ケトン比の計算方法は以下の通りです。今回はWoodyatt の式でケトン比を計算しています。

 

ケトン体を作る物質(K) ケトン体を消す物質(AK)の比

脂 質(F) = 90 %10 %

たんぱく質(P) = 46 % 58 %

糖 質(C) = 0 % 100%

 

Woodyatt の式 = K:AK = 0.9F(g) + 0.46P(g) : C(g) + 0.1F(g) + 0.58P(g)

 

一般的には、K:AK(ケトン比)が 2:1〜3:1 になるように食事内容を調整することが多い ようです。

簡易的には、 F(g):C(g)+P(g) で、おおまかにケトン比の見当をつけることができます。冒頭でも触れたように、消化器症状出現の観点からもケトン比は 1:1→2:1→ 2.5:1→3:1など、徐々に脂質量を増やしていくよう食事内容を組み立てていくことが 推奨されます。

その他注意事項としては下記があります。

 

・ MCT オイルは胸やけを起こしやすいため、使用量は緩徐に増やしていきましょう。 まずは小さじ 1 杯程度から、問題なければ少しずつ量を増やしていきます。

 

・ ケトン食はビタミンやミネラル等の栄養素が不足することがあります。医師・栄養士 と相談し、適切なサプリメントや薬剤等を選択しましょう。

 

あと調理上の注意点としては、MCT オイルは加熱しないようにしましょう(加熱すると煙が出ます)。MCTオイルは 加熱しなくてよい料理(生野菜サラダなど)や、調理後の料理にかけるのがおすすめです。 また、 塩、醤油、酢、だし、香辛料は計算不要です。 砂糖やみりんは使用せず、カロリーゼロ/オフの甘味料等を使用します。

ケトン食におすすめ&避けるべき食材

ケトン食で推奨されている食材をご紹介します。

 

魚類


特に青魚(イワシ・サバ・サンマ等)が良いとされています。青魚は必須脂肪酸と言われている良質な脂質であるDHA・EPA(オメガ3系脂肪酸)が豊富に含まれているので、血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させる効果も期待できます。ただし、照り焼き等、味付け次第では糖質オーバーになってしまうこともあるので、味付けには注意しましょう。

 

肉類

 

お肉は良質なタンパク質と脂質を摂取できる食材なので、ケトン食において積極的に摂りたい食材です。ただし、味付けの際に使用する調味料で余計な糖質を加えてしまわないように、出来る限り塩コショウなどシンプルな味付けで食べるようにしてください。

 

 

卵は1つで約6gのタンパク質が摂れますし、その他の栄養素も豊富に含まれているため、ケトン食では積極的に食べたい食材です。ただし、卵を使った市販のだし巻き卵等の加工品の中には糖質が多く含まれるものもあるため、注意が必要です。

野菜類

ケトン食を健康に継続し効果を実感するためにも食物繊維やビタミンを含む野菜は大切ですので、葉物野菜やブロッコリー・カリフラワー・トマトやアボガドなどの野菜は肉類と同じくらい食べた方が良いとされています。ただし、後述しますが糖質を多く含む野菜については少量であれば良いですが、極力避けるようにした方がいいでしょう。

 

大豆性食品

 

豆類は豊富なタンパク質を含む半面、糖質の多くに含まれる食品も多いのですが、大豆は比較的糖質も低く抗がん作用のある成分も含むためケトン食には推奨される食材です。豆加工食品では特に糖質の低い豆腐・油揚げ・がんもどき・おから・納豆もおすすめです。

 

キノコ類

 

キノコ類は食物繊維を多く含み食後の血糖値上昇を緩やかにする効果もあるため、ケトン食でおすすめの食材です。

 

海藻類

 

海藻もキノコ類と同じく豊富な食物繊維が含まれるため、積極的に食べたい食材です。特にわかめ・ひじき・昆布などの乾燥したものはカルシウムも豊富に含まれるため、牛乳をさけるケトン食ではぜひ摂取していきましょう。

 

対して、極力避けていただきたい食材はこちらになります。

基本ルール:「糖質」が高い食品はNG

 

ケトン食でNGとなるのは糖質が多い食材です。元は糖質が低くても加工食品になると糖質を多分に含んでしまう食品もあり、意図せず摂取してしまうこともあるので気をつけましょう。

 

主食(米、パン、麺類等)

 

これら主食は言わずもがな、炭水化物(=糖質)が多く含まれる食品ですので、ケトン食ではNGとなります。主食が無いと物足りないという方はシラタキを細かく切ってお米に見立てたものや、カリフラワーライスで代用する方もいるので参考にしてみてください。またどうしてもパンが食べたいと我慢できなくなった時は大豆から作られた低糖質パンなども販売されているので活用してみてください。

 

根菜(さつまいも、ニンジン、ごぼう等)

 

根菜は糖質が高いため控えた方がいい食材です。特に糖質の高い芋類やにんじんは避けましょう。ただしレンコンやごぼうは少量ならOKなので摂りすぎに注意しながら取り入れることで食物繊維を補うことができます。その他ショウガ・大根・カブは根菜ですが糖質が低いのでOKです。

 

乳製品(牛乳)

 

低脂肪のものを含む牛乳や乳製品も糖質が高い食品はケトン食ではNGです。ただし、糖質が少ない乳製品(豆乳、グリークヨーグルトや生クリーム、チーズ類)ならケトン食でもOKです。

 

清涼飲料水(スポーツドリンク、炭酸ジュース等)

 

清涼飲料水は昔から想像以上の砂糖が含まれるということが言われているように、ケトン食においても避けたい食品です。糖類ゼロといいながらも低カロリーで甘い清涼飲料水もありますが、ケトン食ではこうしたものに使われる人工甘味料もNGなので避けておきましょう。

まとめ

まとめ

糖質を抑えて良質な脂質を積極的に摂取するケトン食には、難治性てんかんなど実際に医療現場で使用されているエビデンスもますし、その他研究段階ですが、糖尿病、脂質異常症、内臓脂肪蓄積抑制など生活習慣病予防効果や、うつ病などの気分障害、睡眠障害の抑制効果、ニキビの改善効果など研究段階ではありますが様々な効果が期待できます。

 

 ただ、もともとてんかん治療の一環として病院で指導を受けながら行うものであるため、自己判断で厳しく制限し過ぎることで健康を害するリスクもあります。

 

体調を注意深く見守りつつ、副作用が出ない範囲で取り入れてみてはいかがでしょうか。自身でうまくいかない時は、医師や栄養士などに相談するのを検討してみるのも効果面、安全面でも良いと思われます。

監修医師プロフィール

監修医師プロフィール

医療法人社団正恵会 ディオクリニック

藤井 崇博

 

2012年   東邦大学医学部医学科卒業

       東邦大学医療センター大森病院初期研修医

2018年   東邦大学医療センター大森病院循環器内科シニアレジデント

2021年   東邦大学大学院医学研究科博士課程修了

               医療法人社団正恵会 理事長就任

2023年   医療法人社団三橋医院 理事長就任

 

保有資格

 

医学博士(循環器内科学)

循環器内科専門医

内科認定医

 

所属学会

 

日本循環器内科学会

日本内科学会

 

医学博士、循環器内科専門医で現在DIOクリニックを運営する医療法人理事長の藤井崇博と申します。

専門領域は循環器内科という心臓の領域で、2021年まで大学病院で約10年間に渡り臨床、研究、後輩の教育に従事しておりました。現在も循環器疾患を含め高血圧、糖尿病、脂質異常症など外来での診療は継続しております。

循環器内科医として様々な患者さんの診察に日々従事する中で、何よりも大事なのは未病、医学的には1次予防と呼ばれる未然に病気になるのを予防しようとする意識だと思いました。というのも、心臓の病気は他の疾患に比して発症してからでは手遅れなことが多く、また急な発症ということもあり、本人、家族、友人は心の準備含めて準備が出来ていないことが多いです。病気の発症による本人、周囲に与える影響が大きいことは実際に診療している中でも多く、困っている患者さんやそのご家族を多く見てきました。単純に病気を未然に防ぐことができれば本人、家族も一緒に健康に幸せに過ごせる期間が増えると考えました。この病気を未然に防ぐという一次予防の意識が日本ではまだまだ低いので自分がやるしかない!とクリニックを立ち上げることにしました。

最近では対面だけではお伝えしきれないことも多いので、SNSやその他コラムなどで健康に有益な情報の発信に力を入れております。

 

リンク

 

医療法人社団正恵会 ディオクリニック

https://dioclinic.jp/

掲載日:

CATEGORY