【現役医師監修】親知らず、抜くべきケースと抜かなくても良いケースとは?
10代後半~20代にかけて抜歯することが多い、「親知らず」。
約70%近くの人が抜くことになる親知らずは、もはや大人の通過儀礼のような感じですよね。
だけど、親知らずの抜歯と言えば、
・痛い。
・抜歯後パンパンに腫れる。
・口の中が血だらけになる。
・しばらく口が開けられない。
などというネガティブな話を聞くことも多く、
「なんだか怖い…」
と思っている方も多いのではないでしょうか?
抜くときや抜いた後の恐怖を考えると、つい先延ばしにしてしまいがちな親知らず。
親知らずの抜歯は絶対にしなくてはいけないのでしょうか・・・?
INDEX
親知らずってそもそもなに?
そもそも、親知らずって一体どのようなものなのでしょうか?
まずは基礎知識からおさらいしましょう。
親知らずとは、前歯から数えて8番目にあたる、一番奥にある永久歯のことです。
正式名称は、「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)」。
上顎の左右に1本ずつ、下顎の左右に1本ずつあるので、合計4本存在します。
親知らず以外の永久歯は、だいたい15歳頃までには全て生えそろいますが、
親知らずだけは10代後半~20代前半と、生えてくるのが遅めなのが特徴です。
「親知らず」と呼ばれるゆえんは、
年齢的に親が気づかない時期に生えるからだともいわれています。
この親知らずの生え方には人によって個人差があり、
埋もれている人、少しだけ生えている人、完全に生えている人、はたまた親知らずが存在しない人などもいます。
そして生え方によっては、歯ブラシが届きにくくキレイに磨けないため、虫歯や歯周病の原因になってしまうことがあります。
それを防ぐために、親知らずを抜歯する必要があるのです。
親知らずの生え方は大きく分けて3タイプ
親知らずの生え方は、大きく分けると3つのタイプに分類することができます。
親知らずタイプ(1)正常に生えているタイプ
他の歯とおなじように、きちんとまっすぐ、完全に生えているタイプです。
歯としてしっかりと機能しているので、歯周病などのトラブルは起こりづらいと言われています。
しかし、このように生えている人はあまり多くないようです。
親知らずタイプ(2)傾斜して生えているタイプ
親知らずが斜めに傾斜して生えており、その一部が頭を出しているタイプです。
これこそが、一番トラブルが起こりやすいタイプであると言われています。
歯磨きがしづらいため、隣の歯との間に歯垢や汚れが溜まり、歯周病・虫歯を引き起こしてしまうことがあります。
親知らずタイプ(3)完全に埋没しているタイプ
これは、親知らずが骨の中に埋没しており、まったく頭を出していないタイプです。
完全に埋まっているため、歯周病などのトラブルが起こることはあまりありません。
しかし、ごくまれに、骨の中で「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる膿の袋を作ってしまい、それが周りの骨に腫れに悪影響を与えてしまうことがあります。
親知らずを抜いた方が良いケース
では、どういったケースだと親知らずを抜いた方が良くて、どういったケースだと抜かなくても良いのでしょうか。
次のような場合は、親知らずを抜いた方が良いと言われています。
(1)傾斜して生えている場合
親知らずが傾斜して生えており、頭が一部でているような場合は、抜歯が推奨されます。
前述の通り、こういったタイプの親知らずは歯ブラシが届きづらいため汚れが溜まりやすく、歯周病などを引き起こしやすいと言われております。
現時点で腫れや炎症などが出ていなかったとしても、今後のリスクを考えると抜歯したほうが良いでしょう。
(2)すでに症状がでている場合
親知らずが原因で、すでに周りの歯や歯肉に悪い影響を与えている場合は、抜歯が推奨されます。
たとえば、
・親知らずが手前の歯にぶつかって吸収が始まっている
・骨の中に完全に埋まっているが、エックス写真で見たところ「嚢胞」が見られた。
・親知らずに食べ物が詰まりやすく、腫れや痛みを繰り返している。
こういった場合は、放っておくと悪化してしまう可能性があるので、抜歯をした方が良いでしょう。
親知らずを抜かなくても良いケース
一方、次のようなケースだったら、親知らずを必ずしも抜かなくても良いかもしれません。
(1)親知らずが正常に生えている場合
先ほど紹介した「親知らずが正常に生えているタイプ」の場合、歯としてきちんと機能しているため、抜歯する必要はありません。
(2)親知らずが完全に埋まっていて、特に問題が無い場合
先ほど紹介した「親知らずが完全に埋没しているタイプ」で、かつ嚢胞などのトラブルが起きていない場合、特に悪い影響を与えることはないと言われています。
そのため、もし痛みや腫れといった症状が無ければ抜歯する必要はありません。
(3)歯列矯正によって親知らずの生え方を修正できる場合
たとえ親知らずの生え方が悪かったとしても、歯列矯正をする予定があり、かつそれによって親知らずを正常な位置に移動することができると判断された場合は、抜歯の必要はありません。
親知らずを放っておくとどうなる?
このように、親知らずには「抜いた方が良いケース」と「抜かなくても良いケース」の2パターンがることが分かりました。
もしあなたが、「抜いた方が良いケース」にもかかわらず、抜かずに放置してしまった場合、どのようなことが起こり得るのでしょうか?
もちろん、何も起こらないこともありますが、リスクもあるということを念頭におかなければいけません。
たとえば、次のような悪影響が及ぶ可能性があります。
(1)虫歯・歯周病
まず、主な影響として、「虫歯」や「歯周病」が挙げられます。
前述したとおり、一部分だけ顔を出しているような生え方をしている親知らずは、隣の歯とのすき間に汚れが溜まりやすくなっています。
それによって歯垢(プラーク)が溜まり、細菌が繁殖することで、むし歯や歯周病に発展してしまうことがあるのです。
また、虫歯や歯周病が進行していると抜歯がしずらくなり、大きく歯茎を切ったり骨を削らないといけなくなるケースもでてきます。
(2)蜂窩織炎(ほうかしきえん)
最悪の場合、もっと重篤な病気に発展してしまうこともあります。
親知らずによって起こる可能性が高いのは「蜂窩織炎(ほかしきえん)」とよばれるもの。
これは、親知らずの周りの炎症がどんどん広がっていき、あごや首などの深い部分まで及んでしまうという病気です。
喉のあたりまで炎症が進んでしまうと、呼吸困難に陥ってしまうことも。
親知らずがきっかけで重病に発展しまうのは、とっても怖いですよね。
親知らずを抜くのは痛い?料金は高いの?
まずは自分が親知らずを抜くべきかどうかを知るためにも、クリニックで相談するのが大事。
そこでもし抜歯が必要と言われたら、勇気を出して抜歯に臨みましょう。
とはいってもやっぱり怖いのが「痛み」。
抜歯中・抜歯後は、泣き叫んでしまうくらい痛いのでしょうか?
実は、抜歯そのものは麻酔をしてから行うため、しっかり効いて入れば特に痛くはありません。
「歯が抜かれている」という恐怖感や、ひびくような感じはあるかもしれませんが、痛み自体はあまりありません。
しかし、抜歯後は腫れや痛みを感じる方が多い様子。
特に歯茎を切って骨を削ったケースでは大きく腫れることが多いです。
とはいえ、もちろん個人差はありますが、多くの方が耐えてきた痛みですから、「想像を絶する痛さ」ということはないでしょう。
治る日数も人によって異なりますが、1週間も経つと大分落ち着いてくると言われています。
また、痛みと同じくらい気になるのが、「料金」。
歯茎だけでなくお財布にも痛いんじゃ・・・やっぱりクリニックに行くのをためらってしまいますよね。
親知らずの抜歯は基本的に保険の範囲内でおこなえるため、料金は約3,000円~5,000円ほどです(生え方などによって異なります)。
しかし、埋まっている歯などについては別途CTスキャン代(約1,000~2,000円)がかかることもあります。
いずれにせよ、手の届かない金額ではないので安心して受けることができますね。
まとめ
本日は「親知らずの抜歯」についてお話ししました。
ついつい先延ばしにしてしまいがちな親知らずの抜歯ですが、放置しておくと大変なことになってしまう可能性も?!
また、痛んでからでは麻酔が効きづらくなってしまう為にすぐに処置が出来なくなってしまうこともあります。
抜歯が必要なケースに当てはまる場合、まずは医師に相談してみることをおすすめします。
親知らずの抜歯は一時の苦痛は伴いますが、長い目で見たら虫歯や歯周病を防ぐことができるため、「あの時抜いておいてよかった」と思うかもしれません。
今後抜歯を考えている方は、あまり怯えず、気軽にクリニックで相談してみてはいかがでしょうか?
監修医師プロフィール
医療法人社団スタデン理事長
田中 和之 氏
"確かな技術・痛くない・待たせない・丁寧な説明"をポリシーに診療を行う医療法人社団スタデンの理事長。
審美歯科歴17年以上の経験を有し、審美歯科の症例数は5,000件を超えている。
勤務クリニック名:九段下スターデンタル