【管理栄養士執筆】現代人は「リン」の摂りすぎ?摂りすぎのリスクや賢く摂取を減らす方法を紹介
体の調子を整えてくれるミネラル。ミネラルは体に必要だからたくさん摂れば摂るだけいいと思われがちですが、「リン」を摂りすぎると骨がもろくなったり、血管が硬くなったりと悪影響を及ぼすこともあります。
リンはほとんどの食品に含まれていて、知らず知らずのうちに過剰摂取になりがち。この記事では、リンを摂りすぎるとどうなるのか、リンの種類、摂取量を減らす方法などをご紹介します。ソーセージやカップラーメンなどの加工食品をよく食べる人は、チェックしてください。
現代人が摂りすぎな「リン」
リンは、骨や歯に存在するミネラルで、エネルギーの発生に関わっていたり、浸透圧を保ったりとさまざまな働きに関係しています。不足すると脱力感、筋力低下などを引き起こします。そんなリンですが、実はほとんどの食品に含まれるため、不足することはほとんどありません。
タンパク質と結びついて存在していて、肉や魚、乳製品、アーモンドなどに多く含まれます。また、加工食品の食感や見た目、味をよくする食品添加物としても使われています。そのため普段からカップラーメンなどのインスタント食品やソーセージやハムといった加工肉などを食べていると、知らないうちに摂りすぎてしまっていることも。
加えて、食品添加物には添加物の使用基準や表示義務がなく、現状ではどの食品にどれぐらいの量のリンが含まれているのかが把握しにくいのも特徴。とくにコーラなどの清涼飲料水には酸味を出すためにリン酸が多く使われていて、アメリカではジュースの飲み過ぎによるリンの過剰摂取が心配されています。
摂りすぎるとどうなるの?
リンは、体の中でカルシウムと一定の比率で存在しています。そのためリンを過剰に摂取すると体はバランスを取ろうとして、骨に蓄えられたカルシウムを血液中に放出。結果、骨の中のカルシウムが減少してしまいます。
骨のカルシウムが少なくなると、骨折しやすくなったり、骨の中がスカスカになる病気「骨粗しょう症」を引き起こしたりします。また、腎臓ではリンの排泄と再吸収を行い、体内のリンの量を一定に保っています。健康な人なら摂りすぎたリンを尿中に排出できるのですが、腎臓の機能が低下すると、血液中にリンが溜まってしまいます。
血液中のリンの濃度が高まると、血管でカルシウムと結合して石灰化を起こし、血管が硬くなってしまいます。
体内のリンとカルシウムの理想の割合は1:2。とくに日本人は他の国と比べて乳製品の摂取量が少なくカルシウムが不足しがちなので、リンばかりに偏らないように、食生活には注意が必要です。
有機リンと無機リンの違いとは?
ひとことでリンといっても「有機リン」と「無機リン」の2種類があります。それぞれの違いについて解説します。
ほぼすべての食品に含まれる「有機リン」
有機リンは肉や魚、豆、穀類などのタンパク質と結合していて、ほとんどの食品に含まれています。リンを控えたいからといってこれらの食品を制限すると、体に必要なタンパク質が足りなくなってしまいます。タンパク質は筋肉や髪、肌など、さまざまな部位を作る材料になる成分なので、不足すると筋力の低下や肌荒れなど、悪影響を及ぼします。
重症の腎臓病の場合は有機リンが多い食品を控えた方がいいですが、健康な人であればそこまで気にする必要はありません。
カップめんやファーストフードに多い「無機リン」
「無機リン」は食品添加物として、インスタント食品や加工食品・ファーストフード・コンビニ弁当・菓子等に含まれます。
食材の風味や食感、保存性を良くするために使用されています。
原材料名に「リン酸塩」「乳化剤」「かんすい」「膨張剤」「酸味料」「pH 調整剤」などと書かれていれば、無機リンが使われていると思っていいでしょう。
有機リンの吸収率は20~60%なのに比べて、無機リンの吸収率は100%。そのため、リンの摂りすぎを抑えるためには、食品添加物入りの加工食品はできるだけ避けるようにしましょう。
最近では、健康志向を踏まえて添加物不使用の食品が多く出回っています。気になる人はそういったものを選ぶのがおすすめです。
リンの摂取量を減らす方法
加工食品に含まれる「無機リン」は調理方法を工夫することで摂取量を減らすことができます。ゆでると食品の中に含まれるリンが溶け出すので、ゆで汁を飲まないようにすればリンの摂取量は少なくなります。
例えば、インスタントラーメンを作るときは、スープと麺を別で作り、麺のゆで汁は捨てるようにしましょう。また、ウインナーは、焼くのではなく切り込みを入れてゆでるとリンを減らせます。ただ、ゆでこぼしで減らせるリンの量は、多くても全体の1/10程度。できるだけ加工食品を食べる量や頻度を少なくするのがおすすめです。
まとめ
「リン」は添加物として加工食品に多く含まれていて、知らず知らずのうちに摂りすぎてしまいがち。過剰に摂取すると体内でのカルシウムとのバランスが崩れ、骨がもろくなってしまいます。できるだけインスタント食品や清涼飲料水、加工肉などを食べる機会を減らすのがベストです。加工食品を食べるときはご紹介した調理方法を取り入れてみてくださいね。
執筆者プロフィール
安達春香
3年間栄養士として老人ホームや保育園で実務経験を積んだ後、管理栄養士免許を取得。食品会社での研究開発に携わったことも。現在はフリーランスのWebライターとして、栄養に関する記事を専門に扱い、数多くのメディアにて執筆。難しく答えの出にくい栄養に関する知識をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。