【医師監修】あなたもストレートネックかも?原因と予防法、効果的なストレッチなどを解説

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【医師監修】あなたもストレートネックかも?原因と予防法、効果的なストレッチなどを解説

スマホ、パソコンを長時間使う方で、肩こりや首の痛みに悩まされている場合は、ストレートネック(スマホ首)かもしれません。

本記事では、ストレートネックの原因と改善、予防方法についてご紹介します。原因を知ることで、ストレートネックを改善しましょう。

ストレートネック(スマホ首)とは

ストレートネック(スマホ首)とは

そもそもヒトの頸椎(首の骨)はどのような形をしており、ストレートネック(スマホ首)とはどのような状態なのでしょうか。

 

ここではストレートネックの骨の状態や身体に及ぼす悪影響、原因について解説します。

ストレートネックとは首の骨が一直線になっている状態

ヒトの頸椎(首の骨)は7つの骨で構成されており、緩やかなカーブを描いています。骨がカーブしているおかげで、頭の重さを分散して支えられるのです。

しかし、前傾姿勢を続けていると、頸椎(首の骨)がななめに一直線になってしまいます。この状態がストレートネックです。本来の緩やかなカーブが失われることで、頭の重さが分散できなくなり、首の痛み肩こり頭痛につながるといわれています。

ここまでは一般的に言われていることですが、このように巷で言われているほど、医学的にはストレートネックについて明らかになっていることは多くありません。

 

そもそも、ストレートネックって和製英語なんです。英語論文を調べようと思ってストレートネックで論文を調べても全然ヒットしません。。つまり、そんな英語ないわけです。厳密な医学用語ですらないと言えるかもしれません。

 

では、厳密には何と言うのか。主に2つの大事な英語がありました。

1つはtext neckという言葉。これはまさに一般的に横から見て、首が真っ直ぐで頭が身体の軸より前に位置している状態。この名前の由来はスマホなどでテキストを打つときになりやすい姿勢だからと言われています。そういう意味では日本語でよく言われるスマホ首に近い表現になると思います。これはまさに姿勢の問題です。ここでは便宜上、text neck=スマホ首として表現していきます。

 

しかし、整形外科医がストレートネックと表現するときは、主にレントゲンを見たときです。レントゲンでは、首の骨は通常、前に凸のカーブを描いているんですが、それが真っ直ぐにストレートになっていることをストレートネックというわけです。このレントゲンで示されるストレートネックは英語表現としてはloss of lordosisという言葉になります。lordosisっていうのは前弯という意味で、前に凸のカーブってことですね。このカーブがロスして、真っ直ぐになるってことです。ここでは便宜上、loss of lordosis=ストレートネックと表現していきます。

 

つまり、英語で調べてみると明確ですが、巷で言われるストレートネックって2つの状態が混ざってしまっているわけです。この日本では。

 

ここではスマホ首=外観上の姿勢の問題ストレートネック=レントゲンでみた骨の配列の問題と区別して考えていきましょう。

ストレートネックは体に悪影響

巷に溢れる情報として、

「ストレートネックになると、次のような症状が現れます。例えば、・首や肩の凝りや痛み・頭痛・めまい・手の痺れなど。そして、ストレートネックを改善せず、そのままにしておくと以下の症状が現れる可能性があります。・手の痺れの悪化・ヘルニア・めまいやふらつき・顎関節症、食いしばり・耳鳴りや難聴」

というようなことが様々なところで言われています。

しかし、大事なのは、その「根拠」が示されているかを気にするクセをつけていただきたいです。それほどに世に溢れる医療情報は根拠が不足しています。

例えば、先ほどの姿勢の問題であるスマホ首(text neck)の場合は2021年の研究1)によると、首の痛みとの関連はなかったとする結果を報告しているんです。いわゆるスマホ首が果たしてどれだけ身体に悪いかはまだまだ未知数で、意外と、大して悪くないかもしれません。しかし、外観上、やはり印象は良くないのも事実ですから改善したいですよね。

さらに、骨の配列の問題であるストレートネック(loss of lordosis)の場合は2008年の研究2)において、椎間板の変性との関連が示されました。椎間板というのは、首の骨と骨の間にある軟骨のクッションのことで、この椎間板が飛び出して神経を圧迫してしまうのが椎間板ヘルニアというわけです。

つまり、現段階で分かっているのは、椎間板ヘルニアの原因の1つになる「かもしれない」という程度なんですね。となりますと、医学的根拠を基にすると、

ストレートネックが引き起こす可能性があるのは椎間板の変性やヘルニアによって、

 

・首の痛み

・手の痺れ

 

が起こるかもしれないということ、さらに首の痛みの結果、筋緊張性頭痛などを引き起こす可能性もあると言えます。しかし、これらですら、まだ現段階で医学的に「明らか」なことではなく、「仮説段階」であり、その他の症状については一般的には言われているものの、医学的な根拠は私が知る限りありません。

ストレートネックの主な原因

骨の配列異常であるストレートネックの主な原因は現状、明らかになっていません。

 

しかし、姿勢の異常であるテキストネックについては、「習慣的な姿勢の悪さ」「長時間同じ姿勢をしている」が関連することは容易に想像できます。

 

あなたは普段、以下の習慣はありませんか。

 

・同じ姿勢で、長時間スマホを操作している

・デスクワークをしている

・合わない枕を使っている

 

日々の何気ない習慣がテキストネックの原因になることがあるので、日常生活を振り返って原因を探ってみましょう。

同じ姿勢で、長時間スマホを操作している

あなたは普段、長時間同じ姿勢でスマホを操作していませんか。スマホを見るときは、首や頭が下に向きがちです。下向きの姿勢を長時間続けることは、テキストネックを最も助長させるといわれています。テキストネックの名前の由来でもあるわけです。

デスクワークをしている

パソコンの画面に集中して頭が前に出やすくなり、姿勢の悪化につながります。また猫背の姿勢を長時間続けることもテキストネックの原因となります。

合わない枕を使用している

合わない枕の使用もストレートネックを助長します。自分の体に合わない枕で長時間眠ると、頚椎(首の骨)が真っ直ぐになる可能性があります。

スマホ首の改善・予防法

スマホ首の改善・予防法

まず上記のように姿勢の問題であるテキストネックは外観上の印象に悪影響を及ぼす可能性がありますので、改善したいですよね。そのためには

 

睡眠時の枕の高さを調節する

スマホやパソコンを使うときの姿勢を改善し休憩する時間をとる

 

ということが基本的な戦略になります。

睡眠時の枕の高さを調節する

あなたは普段、自分にあった枕を使っていますか。睡眠時、枕が高すぎると常に下を向いている状態になりストレートネックの原因につながるといわれています。

 

また、柔らかすぎる枕も首に負担がかかるとされます。枕は高さが高いものや、柔らかすぎるものは避けて選ぶことがポイントです。

スマホを使う時、デスクワーク時の姿勢を改善し、適度に休憩する

スマホやパソコンを操作するときは、下を向きすぎないよう姿勢に注意し、しっかりと休憩を取りましょう。スマホは、使う時間をあらかじめ決めておくと、意識して休憩を取れます。また、片手ではなく両手で操作するのもおすすめです。

 

デスクワークは、自分に合う机と椅子の高さで行いましょう。また合間に休憩をとり、できるときはストレッチも取り入れましょう。

ストレートネックの改善・予防法

また、骨の配列の異常であるストレートネックの改善についてはいくつか研究されています。例えば、2017年の研究3)ではストレートネックの改善率が他の運動では22.5%であったのに対して、85.2%の改善率を示した運動が示されています。

 

実際には簡単です。

 

1.猫背にならず、身体の軸の真上に頭がある良い姿勢を維持します。

2.この状態で後頭部に両手を回して、指を組んで、後ろから前に頭を押す力を加えます

3.その両手の力に抵抗するように首に力を入れます。

4.これを10秒3セット

 

これは等尺性頸椎伸展訓練という名前がついていて、ごく一般的な簡単なエクササイズですが医学的な根拠があります。他にも様々なエクササイズが提唱されていますが、常にそのエクササイズは本当に効果があるのか?と疑い、その根拠(主に医学論文)が示されているかを確認するクセをつけていただけると、世にはびこるニセ医学に欺されにくくなるかと思います。

まとめ

世にある情報には多くの医学的根拠がない、もしくは不足しているもので溢れています。ストレートネックについての情報はその代表的な1つで、実際は和製英語であることをお伝えしました。厳密には姿勢の異常であるテキストネックと骨の配列の異常であるloss of lordosis(ここでは便宜上、こちらをストレートネックとしました)があり、それぞれ引き起こすデメリットが違うこと、改善方法も違うことがご理解いただけたかと思います。

 

参考文献

 

1)Association Between Text Neck and Neck Pain in Adults

Igor Macedo Tavares Correia et al. Spine (Phila Pa 1976). 2021

2) Masashi Miyazaki et al. Spine (Phila Pa 1976). 2008

Kinematic analysis of the relationship between sagittal alignment and disc degeneration in the cervical spine

3) Isometric Exercise for the Cervical Extensors Can Help Restore Physiological Lordosis and Reduce Neck Pain: A Randomized Controlled Trial

Mahmut Alpayci et al. Am J Phys Med Rehabil. 2017 Sep.

監修医師プロフィール

監修医師プロフィール

整形外科医

歌島 大輔


フリーランス整形外科医として、常に磨き上げ続けている肩関節鏡手術スキルを駆使し、五十肩・腱板断裂などを対象に治療を行っている。また、情報発信ドクターとしての顔も持ち、「正しい医学情報をわかりやすく」をモットーに、情報発信・オンライン教育事業を積極的に展開している。
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