2022年4月から不妊治療の保険適用が拡大?!妊活のために検査すべき「AMH値」の解説や医師へのインタビューも公開
以前と比べると不妊治療というものは非常にメジャーになってきており、現在は5組に1組のカップルが受けているとも言われています。
そんな不妊治療に関して、素晴らしいニュースが。
なんと、2022年の4月より不妊治療の保険適用範囲が拡大したのです!
これにより、経済的な理由で治療をあきらめていたカップルも治療を受けやすくなることが期待されています。
現在治療中、もしくはこれから不妊治療を受けようと思っている、という方には朗報ですよね。
今回は、そんな妊活に関するニュースや基礎知識などについて徹底解説。
後半では不妊治療の第一人者である浅田医師へのインタビュー内容もお送りします♡
INDEX
- ・2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大
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・不妊治療の第一人者、浅田医師へインタビュー!
Q.不妊治療の保険適用前と後で受診率に変化は?
Q.保険適用になってない治療法(自費診療)も未だにある?保険診療さえ受けていれば良いの?
Q.不妊治療の保険適用後も助成金制度は継続されている?その場合、保険適用と助成金の併用は可能?
Q.生活スタイルや食事など、不妊治療以外にできる対策は?
Q.昨今よく聞く「産み分け」は現実的に可能なの?
Q.不妊症と診断されていない(性交がない/セックスレス)夫婦でも受診は可能?
Q.クリニックを選ぶうえで重要な点、注視すべき点は?
Q.不妊治療にあたり浅田先生が心掛けていることは?
Q.不妊治療を諦めかけている、なかなか治療に踏み出せない、という方々にアドバイスをお願いします。
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・まとめ
2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大
冒頭で述べた通り、2022年の4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大しました。
これまで、高度な不妊治療は保険適用の範囲外とされていたのですが、4月からは「体外受精」や「人工授精」も保険適用の範囲として認められるようになったのです。
保険適用範囲が拡大してから治療に踏み切った人も?
これにより、不妊治療のハードルが一気に低くなりました。
浅田レディースクリニックが2022年8月に行った調査によると、現在不妊治療をしている人のうち約3割が2022年4月以降に不妊治療を開始していることが分かります。
また、その中の92.8%の人が保険適用範囲の拡大は治療を始めるきっかけになった、と回答。多くの方にとって不妊治療の門戸が広がったことが見て取れますね。
【調査概要】
インターネット調査
・調査方法 :インターネットアンケート
・調査実施機関:株式会社ネオマーケティング
・調査実施期間:2022年8月4日(木)~8月8日(月)
・対象地域 :全国
・対象者 :600名(20~40代男女 各年代 100名)
64%が保険適用範囲の拡大を知らない
不妊治療を受けたくても経済的な理由で受けられなかったカップルにとっては福音となる今回のニュースですが、実はこのことを知らない方も多数。
浅田レディースクリニックが行った調査によると、20代の女性の64%が不妊治療の保険適用範囲拡大について知らないということが分かりました。
これによって恩恵を受けられる人も多いはずなのに、ちょっともったいないですよね。
【調査概要】
インターネット調査
・調査方法:インターネットアンケート
・調査実施機関:株式会社ネオマーケティング
・調査実施期間:2021年9月9日(木)~2021年9月10日(金)
・対象地域:全国
・対象者:300名(20~40代 各年代 100名)
妊活のためにまず検査するべき「AMH値」とは
このニュースを聞いて、私も早速不妊治療を受けてみたい!と思った方もいらっしゃるかもしれませんね。
妊活の第一歩として、まず検査していただきたいのが「AMH値」。
これを調べることによって自分に不妊治療が必要なのか、また行う場合どういった治療が必要なのかが分かってきます。
AMH値とは、自分の卵巣の中にあとどのくらいの卵子が残っているのかを示す指標。
血液検査によって調べることができます。
AMH値の高い低いは妊娠率とは関係なく、高くても低くても妊娠・出産している人はいますが、その結果によって、下記のようなことが分かります。
値が低い(1.0ng/ml以下):残りの卵子が少ないため、早めに治療を開始した方がいい
値が高い(4.0ng~5.0ng/ml以上):多嚢胞性卵巣症候群の可能性があるので不妊治療が必要
つまり、自分のAMH値を調べることで妊娠・出産のプランを立てやすくなるということです。
不妊治療の第一人者、浅田医師へインタビュー!
いざ始めると言っても、不妊治療にはさまざまな不安がつきものですよね。
ここからは、不妊治療の第一人者である、浅田レディースクリニック院長の浅田義正医師にご協力いただき、さまざまな質問に答えていただいたので共有したいと思います♡
Q.不妊治療の保険適用前と後で受診率に変化は?
A.新しい患者さんがどんどん増えてきたという印象はありません。ただ、今までにない若い人が気軽に受診しているケースが少し見られたという感じでしょうか。
また受診者の中で、保険で診療する割合は少しずつ確実に上がっています。当院は3つクリニックがありますが、住宅地にある郊外型のクリニックのほうがより保険希望の方が多いです。都心部にあるクリニックは、郊外型のクリニックに比べると保険診療が多いわけではありませんが、少しずつ保険診療を希望する割合が増えています。
患者さんが激増したというような大きな変化は、思った以上にはなかったというのが今の印象です。
Q.保険適用になってない治療法(自費診療)も未だにある?保険診療さえ受けていれば良いの?
A.保険診療というのは、健康保険法等で規定された治療のみを保険医登録した医師が登録した保健医療機関で行うというものです。自費診療とは根拠となる法律が違うということを、まず頭においてください。そのうえで厚生労働大臣が決めた適応の薬のみを使って治療をするということになります。
保険適用になっていない治療法は存在しますかという質問に対しては、(保険適用で)治療しようとしても制限があってできない治療は山ほどあります、という回答になります。それは(保険適用の場合だと)患者さんにあわせていろいろ工夫をしなければいけないことが制限されてしまうからです。
保険は、保険の支払い機構が審査をして医療機関に支払いをするものですから、例えば検査の回数も月に何回とか決められていて、この人はたくさん検査をして細かく診ていかなければいけないのに診れないというような、医者にとっては非常にもどかしい診療が、保険診療の日常となります。ですから、自費診療で行った場合の不妊治療とは違い、保険診療ではその人にとって一番良い治療法を選んで細かく診ていくということは難しいです。
今回は通常より短期間で保険適用範囲を決めたので、全ての治療法や薬を網羅できていません。これから何年かかけて、改訂をして更に患者さんと医療者にとっても良い保険適用になるようにしていかなければなりません。
Q.不妊治療の保険適用後も助成金制度は継続されている?その場合、保険適用と助成金の併用は可能?
A.保険適用によって特定不妊治療助成金制度は令和3年度末をもって終了になりましたが、令和4年4月1日時点で治療が続いている方については、経過措置(令和4年4月1日から令和5年3月31日まで)が適用されます。
また、各自治体において独自の助成事業を開始している場合があります。保険診療の自己負担分や先進医療に対して助成金が出る場合もあるようです。助成の有無や内容については、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。
Q.生活スタイルや食事など、不妊治療以外にできる対策は?
A.妊娠のしやすさや妊娠のしにくさを、生活スタイルや食事等で簡単に変えられたら妊娠するのに苦労をしないと思います。
昔から間違った都市伝説のようなものが世の中に蔓延していて、ほとんどは信ずるに値しないものです。というのも、地球上の至るところに人類は生きています。食べるものも、腸内細菌も全部違います。それでも妊娠できない人種がいるわけではありません。ということで、そういう考え方自体が間違っていると言えます。
ただ、妊娠した後は赤ちゃんのために栄養を取らなければいけないので、赤ちゃんのためにやらなければいけない注意はたくさんあります。それを努力したとしても妊娠率が上がるわけではありません。妊娠するためと妊娠中の生活、そこの注意点は全く違うと思ってください。たとえば、日本で一番赤ちゃんがたくさん産まれたのは、戦後の一番栄養状態が悪いとき、第1次ベビーブームです。栄養が妊娠の成否に影響するならば妊娠率は落ちるはずですが、爆発的に赤ちゃんがいっぱい産まれました。
世界では、生活環境の良いはずの先進国で出生率がどんどん落ちています。依然、生活環境の悪いところや衛生状態の悪いところでどんどん赤ちゃんが産まれ、人口コントロールができないことが社会問題になっています。それを踏まえると行動や食品で妊娠率や出生率は変わらないといえます。妊娠率と赤ちゃんの健康は全く別物ととらえていただきたいと思っています。
Q.昨今よく聞く「産み分け」は現実的に可能なの?
A.それが可能だったら、おそらくみんながやっているでしょう。畜産の世界では、精子を振り分けることによって、肉牛はオスだけ、乳牛はメスだけという産み分けを8割くらいの確率でできているそうです。ですからヒトでも同じことをやれば少し確率がよくなるかもしれません。
しかし、今までのすべての産み分け法というのは少なくとも50%の確率で当たるわけです。20年くらい前のアメリカの生殖医学会の発表によると、産み分けをちゃんと科学的に証明できるのは、フローサイトメトリ―で精子を分けることです。ただそれをヒトでやろうとすると何十万円もかかったうえに8割くらいの確率です。何もしなくても5割ですので、実用的ではないというのが現実的な話だと思います。
Q.不妊症と診断されていない(性交がない/セックスレス)夫婦でも受診は可能?
A.不妊症の診断というは、結婚していて性交渉があるにもかかわらず1年間妊娠しない場合を不妊症といっています。不妊症の診断基準は、そもそも曖昧です。
性交がない、セックスレスという方の中には、性交ができないという方や射精できないという方もいますので、それも不妊症のひとつと考えて相談されていいと思います。
Q.クリニックを選ぶうえで重要な点、注視すべき点は?
A.不妊治療はまだまだ発展途上の段階のものです。ですから、がんの治療やお産などと比べれば極めて歴史が浅く、確立された治療法があるわけではありません。やっていることがクリニックによってばらばらです。ですから、クリニック選びを間違うと、なかなか妊娠できないということで患者さん自身が苦労することになります。医師の知識、技量、能力をちゃんと見極めた上で受診していただきたいと思います。
ドクターの方は保険診療の場合、日本全国どこで誰がやっても同じ治療が同じ料金ということでそこに差があってはいけないということを前提にしているので、より見極めにくくなっています。ですから、できる限りドクターの経歴や研究内容、何の専門か、どんな診療をしてきたか、不妊治療でしっかりとした実績があるかを確かめて受診していただきたいと思います。一番見ていただきたいのは本当に不妊治療に真剣に取り組んでいるかどうかです。
不妊治療は一見華やかで儲かりそうに見えるので、もともと専門でない人がどんどん参入してきています。クリニックがどのようなところにお金を投資してどんな設備にしているか、胚培養士や体外受精コーディネーターなどの人員が揃っているかどうか、そこまで見ていただけるとそのクリニックの本質がわかります。
そして一番大事なことは不妊治療の根幹である心臓部は培養室(ラボ)です。
そこには胚培養士といった専門の職種の人がたくさんいて、高いレベルで仕事をしていなければなりません。胚培養士がきちんと教育されて仕事をしているかどうか、ラボがちゃんとしているかどうか。ラボは普通ブラックボックスで見えないのですが、当院では見えるように見える化を図ってきました。体外受精の心臓部である培養室がどれだけ充実しているか、人的にも設備的にもということが重要です。
Q.不妊治療にあたり浅田先生が心掛けていることは?
A.当クリニックは、痛みを取り除くことが医療の原点だと考えているので、「痛みのない不妊治療」がモットーです。不妊治療においては、患者さんの身体に極力負担をかけたくないという考えから、採卵手術時には必ず静脈麻酔を行っています。
麻酔を適正にできる医師、麻酔後も適正に管理できるよう回復室を設けた施設、麻酔を適正に管理できるようしっかりとした教育を受けた看護師、スタッフをそろえて、不妊治療を行います。
私は顕微授精の研究からこの世界に入りました。1993年からやっています。ですから、不妊治療の発展と共にずっとやってきたわけです。今現在、保険適用も含めてだんだん不妊治療が大きく認知されるようになったことはいいことだと思っています。
日本全体の治療レベルを上げるためにも、ドクターを育て、まともな生殖医療をきちんとやっていきたいと思っています。
Q.不妊治療を諦めかけている、なかなか治療に踏み出せない、という方々にアドバイスをお願いします。
A.女性は高齢になると、体に負担がかかるので妊娠しなくてもいいよう卵子がだんだん老化し妊娠しづらくなるように、体の構造ができています。
ですから、年齢にこだわってちゃんと妊娠しやすい時期に、妊娠、出産、家族形成をして幸せになってほしいという風に思っています。人の幸せを考えたとき、不妊治療は家族形成のひとつと考えていただきたいと思います。
不妊治療は子育ての助走のようなものです。多くの人はあまり苦労せずにクリアしているわけですが、不妊患者さんはそこで苦労します。少しでも妊娠しづらいかな?と思ったら、迷わず早く結果を出してくれる、きちんとしたクリニックを選んで受診してください。そこで結果が出なければクリニックを変えて、結果を出し、早く子育てに進んでほしいと思います。
まとめ
本日は、妊活に関するニュースや基礎知識、医師へのインタビューなどをご紹介しました。
昔と比べると、不妊治療を受けやすい環境はだいぶ整ってきました。
保険適用でできることに限りがあるなどまだ解決すべき課題はありますが、それでも適用範囲が拡大したことは大きな進歩であると言えます。
悩んだまま行動せずにいたら未来は変わりません。
まずは、クリニックのドアをたたいてみてはいかがしょうか?