増やすだけで肌が綺麗に?注目の腸内細菌、「酪酸菌」とは?増やし方は?
近年、腸内環境を整えて美しい肌や健康な体を手に入れる「腸活」が話題になっています。腸に良いものといえば、ヨーグルトやキムチなどに含まれる乳酸菌やビフィズス菌を思い浮かべる人も多いでしょう。ところがここ数年、さまざまな研究が進む中で「酪酸菌」への注目が集まってきています。
この記事では、美容や健康にいいとされる酪酸菌について詳しく解説します。酪酸菌の効果や増やし方もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
酪酸菌とは?
酪酸菌とは、腸内環境を整える働きがある善玉菌の一つ。1種類の菌を指すのではなく、腸内の食物繊維をエサにして「酪酸」を作り出す菌の総称です。腸内で作られた酪酸は、腸を動かすためのエネルギーとして使われるほか、体にさまざまな効果をもたらすとして注目されています。
最近では、65歳以上の健康な高齢者の腸内には酪酸菌が多いことがわかってきました。このようなことからも、私たちが元気に長生きするためには酪酸菌が重要だと考えられています。
酪酸菌の効果
続いては、酪酸菌の効果について見ていきましょう。
腸内環境の改善
酪酸菌は、腸内環境の改善に効果的です。私たちの腸には、体に良い働きをする「善玉菌」とどちらにも属さない「日和見菌」、有毒物質を作る「悪玉菌」といった3種類の菌が住んでいます。理想的なバランスは善玉菌2:日和見菌7:悪玉菌1とされており、悪玉菌が増えると下痢や便秘といったお腹の不調につながります。
酪酸菌には、腸内を弱酸性に保って悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。それにより善玉菌が増え、腸内環境が整えられるのです。
肌トラブルの改善
肌の調子は、腸内環境と大きく関わっていると考えられています。
腸内環境が悪化すると悪玉菌が有害物質を作り出し、血液を通じて全身に回ります。その有害物質が肌に到達すると肌荒れやニキビといった肌トラブルを引き起こすのです。実際にニキビ患者の54%は、腸内環境が悪いという報告もあります。このことからも、酪酸菌によって腸内環境が改善すると肌トラブルが減少し、美肌につながると考えられているのです。
免疫力の向上
新型コロナウイルスの流行を受け、免疫力について関心がある人も多いでしょう。酪酸菌は免疫力の向上にも効果的です。免疫とは、外から侵入してきたウイルスや病原体、体の中で発生したがん細胞などを攻撃し、体を守る防御システムのことです。
ウイルスや病原体などは、食べ物や空気と一緒に口や鼻から侵入してきます。ほとんどは胃酸で死滅すると考えられていますが、一部は腸まで到達してしまいます。
もし腸にバリア機能がなければ、有害物質もそのまま体内に取り込まれることになってしまいます。そうならないように、腸にはバリア機能が備わっているのです。腸内の免疫細胞の割合は全身の70%を占めるといわれるほど。したがって、腸内環境を整えることは免疫アップのためにも有効だと考えられているのです。
酪酸菌は腸内環境を整えるため免疫細胞を活性化し、免疫力の向上にもつながります。
炎症・アレルギーの予防
酪酸菌は炎症やアレルギーの予防にも効果的です。アレルギーや花粉症といった症状は、本来なら害がない物質に対して、免疫機能が過剰に反応してしまうことによって起こります。
酪酸菌には「制御性T細胞」を増やす効果があります。制御性T細胞とは、自分の細胞を間違えて攻撃しないように免疫細胞を制御している細胞のこと。制御性T細胞が増えることで、体に取り込むべき栄養素と、排除すべき異物を正確に分類できます。腸内の酪酸菌を増やすことで、花粉症やアレルギーの予防に役立ちます。
酪酸菌の増やし方
ここからは、酪酸菌を増やす方法についてご紹介します。
難消化性でんぷんや食物繊維を摂取する
酪酸菌はぬか漬けや臭豆腐といった食材にしか含まれていません。しかし、臭豆腐は日本人にとってはあまりなじみがない食材ですし、ぬか漬けは大量に食べると塩分過多になってしまうため、食品から摂取するのは困難といえるでしょう。そのため酪酸菌を増やすためには、サプリメントを利用したり、エサになる食品を食べたりすることが重要です。
酪酸菌は、難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)や食物繊維をエサにして酪酸を作り出します。難消化性でんぷんとは、芋や米などに含まれている小腸で消化吸収されないでんぷんのこと。食物繊維と似た働きがあり、腸内環境の改善に効果的です。
難消化性でんぷんは冷やすことで増加するため、ポテトサラダやおにぎりを食べるのがおすすめです。
また、野菜や果物、海藻などに含まれる水溶性食物繊維や、穀類や豆類に多い不溶性食物繊維も欠かせません。レジスタントスターチや2種類の食物繊維をバランス良く摂るようにしましょう。
定期的に運動をする
酪酸菌を増やすためには、定期的な運動も重要です。適度な運動は血流を促し、腸の活性化につながります。週3~4回のペースで30分から1時間程度、散歩やラジオ体操、ストレッチなどを行いましょう。
とはいえ、普段運動をしない人がいきなりハードな運動習慣を作るのは難しいものです。通勤時に1駅手前で降りて歩く、階段を使うなど、少しずつ日常生活に取り入れていきましょう。
まとめ
酪酸菌には、腸内環境の改善や肌トラブルの改善、アレルギーの予防などさまざまな効果があるといわれています。酪酸菌を含む食べ物は多くありませんが、食物繊維やレジスタントスターチの摂取、定期的な運動によって増やすことができます。酪酸菌を増やして腸内環境を整え、健康的な体を手に入れましょう。