【管理栄養士執筆】食後高血糖は万病のもと!?危険性や予防法を詳しく解説
パスタやカレー、チャーハンなど炭水化物が中心の食事が好きで、よく食べている人は多いはず。炭水化物は体のエネルギー源となる欠かせない栄養素ですが、食べすぎると「食後高血糖」を引き起こす危険性があります。食後高血糖は、眠気や糖尿病、脳梗塞、認知症など、さまざまな病気の原因となることがわかっています。
そこで今回は、食後高血糖の危険性や予防法について解説します。
食後高血糖ってなに?
食後高血糖とは、食事を食べた後、2時間経っても血糖値が高い状態のことを指します。
食事をした後は、誰でも一時的に血糖値は上がります。そして、通常であれば、糖を細胞内に取り込む「インスリン」というホルモンが分泌され、血糖値が元の正常値に戻ります。
しかし、インスリンがうまく作られなかったり、働きが悪かったりすると血糖値が下がらず、食後高血糖と判断されます。通常の検診の血液検査では「空腹時血糖値」を測るので、この食後高血糖は見逃されがち。知らず知らずのうちに糖尿病に進行してしまう恐れがあり、「隠れ糖尿病」とも呼ばれています。
食後高血糖の原因は?
食後高血糖の主な原因は、インスリンがうまく作用しづらくなることで、「インスリン抵抗性」と呼びます。
運動不足、肥満、ストレス過多などの生活習慣が関わっています。また、急激に血糖値を上げる白米や麺を多く食べることも高血糖の原因に。
ただし、中には遺伝的にインスリンが効きづらい人や、免疫の病気によってインスリンが分泌されにくい人もいます。
食後高血糖が続くとどうなるの?
食後高血糖はさまざまな病気を招くといわれています。食後高血糖が続くと体にどのような影響があるのかを見ていきましょう。
心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす
高血糖状態が続くと血液がドロドロになって血流が悪くなり、血管が傷つきやすくなります。血管に大きな負担をかけ、動脈硬化を進行させる可能性があります。動脈硬化は、血管が硬くてもろくなる状態を指し、これが進行すると、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、末梢動脈疾患(PAD)などのリスクが高まります。末梢動脈疾患は、足の血管が硬化し、血流が制限されてしびれや痛みが生じる病気で、最終的には潰瘍や組織の壊死につながるとされています。
認知症のリスクが高まる
食後高血糖が持続すると動脈硬化が進行し、脳内の血管が詰まりやすくなります。これにより、脳の神経細胞への血液供給が不足し、認知症が発症するリスクが高まるといわれています。
また、糖尿病患者とその予備軍は、そうでない人よりアルツハイマー型認知症の発症リスクが4.6倍も高まることがわかっています。「隠れ糖尿病」ともいわれている食後高血糖は、一見関係なさそうな認知症とも大きく関わっているのです。
いまのところ、認知症の治療法はありません。しかし、食後高血糖は食事や運動である程度予防できます。生活習慣を改善して認知症を防ぎましょう。
食後高血糖の予防法
食後高血糖になりやすい人の特徴として「炭水化物中心の食事をよく食べる」「食べるスピードが早い」「運動不足」などが挙げられます。では、どうすれば食後高血糖を予防することができるのでしょうか。ここでは、簡単に取り入れられる方法を3つご紹介します。
食べる順番は野菜から
食事をするときは、野菜や海藻のような食物繊維が豊富な食品を最初に食べて、その後にごはんやパンなどの炭水化物を食べることをおすすめします。これにより、糖質が緩やかに吸収され、食後の血糖値の急上昇を抑えることができます。野菜を先に食べることで食事量を自然に減らせるので、ダイエットにも効果的です。また、しっかり噛んで、ゆっくり食べることも意識しましょう。
3食しっかり食べよう
朝は食欲がないからと、抜いている人も多いと思います。朝食を抜いたり、長時間空腹の時間が続いたりした後に食事をとると、血糖値が急上昇し、インスリンを分泌する膵臓に大きな負担がかかります。その結果、インスリンの働きが低下してしまいます。規則正しく3食食べて、食後高血糖を予防しましょう。
適度な運動を取り入れよう
食後に適度な運動をすることで、血糖値の急上昇を予防できます。なんと、食後にわずか2~5分の軽い運動をするだけでも、食後の血糖値は大幅に下がることがわかっています。激しい運動は胃に負担がかかるので、ウォーキングやサイクリング、階段の上り下りなど、軽い運動を取り入れましょう。
食後に体を動かすことで血行が良くなり、消化が促されて頭もすっきりします。最も血糖値が高くなる食後1時間頃に軽い運動を取り入れるのが効果的です。
まとめ
食後高血糖は通常の検診では発見されず、知らないうちに糖尿病になってしまう恐ろしい症状です。気づかないまま過ごしていると、心筋梗塞や脳梗塞、認知症を引き起こすこともあります。食事や運動などを取り入れて、食後高血糖を予防しましょう。
執筆者プロフィール
安達春香
3年間栄養士として老人ホームや保育園で実務経験を積んだ後、管理栄養士免許を取得。食品会社での研究開発に携わったことも。現在はフリーランスのWebライターとして、栄養に関する記事を専門に扱い、数多くのメディアにて執筆。難しく答えの出にくい栄養に関する知識をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。