いよいよ2020年7月1日からスタートされる『レジ袋有料化』について解説
2019年6月3日、当時の環境大臣である 原田義昭氏*1 がレジ袋の有料化(無料配布の禁止)をスーパーなどの事業者に対して法令で義務化する考えを発表。(*1 現環境大臣は小泉進次郎氏)
※記事更新※
そして、「2020年7月1日」から全国の 小売業*2 を対象に、プラスチック製買い物袋の有料化されることが正式に決定いたしました。
「*2 各種商品小売業、織物:衣服・身の回り品小売業、飲食料品小売業、自動車部分品・附属品小売業、家具・じゅう器・機械文具小売業、医薬品・化粧品小売業、書籍・文房具小売業、スポーツ用品・がん具・娯楽用品・楽器小売業及びたばこ・喫煙具専門小売業」
レジ袋ってこれからどうなっていくの?
なぜ有料化されるようになったの?
私たちが今するべきことはどんなこと?
…などなど。
疑問はさまざまですが、これからの買い物の仕方についていっしょに考えていきましょう!
私たちの生活とレジ袋
環境省が発表した「レジ袋有料化」の法令は、対象の事業者はプラスチック製のレジ袋を無償配布してはならないというもの。
冒頭にもある通り、ここでいう事業者にはスーパー、コンビニ、ドラッグストア、百貨店などの全小売業者、および小売業以外であっても事業の一部として小売を行っている事業者も含まれます。
なお、レジ袋の価格は各事業者が自由に設定することができ、有料化による売上の使途についても事業者側の判断に委ねられているようです。
※但し、下記のような場合は有料化として認められないので注意が必要です。
・レジ袋の価格が消費者に明示されていない
・消費者がレジ袋をもらわなかった場合、いくら差し引かたのかがレシートなどに明示されない場合
・レジ袋の1枚当たりの価格が1円未満の場合
・複数枚のレジ袋を提供する際、一部を無料配布する場合
今までどこに買い物に行っても当たり前のようにもらっていたレジ袋が有料化されるとなると、いろいろと不便な部分もあるかと思います。
レジ袋の歴史
レジ袋は、1970年ごろからスーパーやコンビニで使われ始めました。
もともとは、1960年ごろに広島県大竹市の袋メーカー「中川製袋化工」が、当時主婦の買い物バックとして主流だった竹籠によってストキングが伝線するという悩みを解決するべく、梨狩り用のポリ袋を開発したのがきっかけだったと言われています。
この梨狩り用のポリ袋が、梨の重さに耐え、持ちやすく、雨にも強かったことから小売店などで紙袋に代わってレジ袋として大量に使われるようになりました。
丈夫で水にも強く、油も吸収するので、もらったレジ袋を綺麗に保管してゴミ袋など別の使途でも活用しているという人がほとんどではないでしょうか?
わざわざ買わなくても、日常の買い物でもらえるものだから、これまでは当たり前のように使ってきましたね。
しかし、このレジ袋有料化が義務付けられた要因とも言える海洋プラスチック問題について、次章より解説していきます。
海洋プラスチック問題
近年、よく耳にするようになった海洋プラスチック問題。
一体どのようなものなのでしょうか?
「海洋プラスチック」とは…
人間が捨てたプラスチックごみが雨や風によって川に流れ、海にたどりついたもの、海に捨てられたプラスチックごみなどのこと
これらのプラスチックは丈夫で軽いためにどこまでも流され、自然になくなることはありません。
その結果、海岸に打ち上げられたクジラの胃の中から、40㎏以上のビニール袋が出てきたり、親鳥がエサと間違えてプラスチックを雛鳥に与え続け、大人になる前に多くの雛鳥が死んでしまったという例が世界各国で後を絶ちません。
ここ日本でも、昨年の夏に神奈川県鎌倉市の浜辺に打ち上げられたクジラの赤ちゃんの胃の中からプラスチックごみが発見されました。ビニール袋を食べたためにエサを消化することができなくなり、死んでしまったと考えられています。
また、現在海の中には3種類のごみが存在しています。
■1つ目は「漂流ごみ」。
水面や水中を浮遊しているごみで、長い年月をかけて風や海の流れによって運ばれてきます。
中でも、水面に浮かんでいるごみは日光によって分解が進み、マイクロブラスチックというとても小さなプラスチックの粒になって海の中を漂い続けます。
■2つ目が「漂着ごみ」。
海岸などに打ち上げられた大きなごみで、自然のものに交じって生活ごみや漁具などが多く見られます。
海岸まで打ち上げられることで、砂浜で遊ぶ子供たちだけでなく、産卵を行うウミガメにまで大きな影響を及ぼします。
■3つ目が「海底ごみ」。
海底に沈んでしまったごみで、海底で暮らす生物たちに大きな影響を及ぼします。
砂などに交じって発見されにくく、何十年~何百年も海に存在し続けます。
このようなごみが、現在1億5,000万トン存在しており、さらに年間で800万トン(重さにして、ジャンボジェット機5万機相当)が海に流れています。
また、日本の1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量については、世界第2位であり、廃棄の仕方を考えていく必要があります。
このままの状態が続くと、2050年にはプラスチック生産量はさらに約4倍となり、「海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る」と世界経済フォーラムは発表しています。
レジ袋以外に、海洋プラスチックごみには次のようなものが含まれます。
・フォークやスプーン、ストロー、マドラー
・包装材
・ボトル類やパック類などの容器
・漁具(網・釣り糸など)
・発泡スチロール
・ペットボトル
ひとつひとつは小さくて軽いものですが…
レジ袋1枚が分解されるまでには20年ほどかかり、発泡スチロールのカップであれば50年、ペットボトルは400年、釣り糸にいたっては600年以上かかるといわれています。
また、分解されても消えてなくなることはなく、マイクロプラスチックとして海で暮らす生物たちの体に残り続けます。
そして、そのマイクロプラスチックを体内に蓄積した魚を食べる私たちの体にもマイクロプラスチックが蓄積されることになります。
要するにめぐりめぐってプラスチックごみを捨てた私たち自身が、のちのちマイクロプラスチックを食べることになってしまうというわけです。
各国での取り組み
海洋プラスチック問題を受けて、世界各国ではさまざまな取り組みが行われています。
2016年の世界経済フォーラムでこの問題が報告され、2018年には欧州委員会が脱プラ戦略を公表しました。
また、2018年6月のカナダで行われた主要7ヶ国首脳会議(G7サミット)でもプラスチックごみ対策の憲章が議題になりました。
それだけ多くの国で注目を集めており、実際に2018年7月には127ヶ国でレジ袋の使用に何らかの法規制があり、83ヶ国が無料配布を禁じています。
さらに、日本がプラスチックごみの多くを輸出してた中国は、プラスチックごみの輸入を禁止、東南アジアにもこの動きが広がっています。
しかし、日本は主要7ヶ国首脳会議(G7サミット)で署名を見送り、現在も具体的な政策を打ち出せていません。
そのため、2020年のオリンピック開催国でありながら、プラスチックごみ問題に対する意識が非常に低い状態なのです。
先日大阪で行われた20ヶ国・地域首脳会議(G20サミット)では、こうした世界各国の対応を受け、首脳会議の会場で振舞われる料理の容器や箸、スプーンなどは木製のものを使用していました。
プラスチックのごみは分解されても、マイクロプラスチックとして残ってしまうのに対して、木材はもともと自然由来の木であることからリサイクルだけでなく、自然分解も可能で、非常に環境にやさしい資源です。
このように、プラスチックごみ問題の政策を打ち出す必要に迫られた日本が検討した政策が、この『レジ袋有料化』だったというわけです。
これからの買い物
では、私たちのこれからの買い物はどうなっていくのでしょうか?
インターネットやスマートフォンの普及によって通販などを利用する人が多くなっていますが、一方で今問題となっている配達員(物流企業)の人手不足による送料の値上げも懸念されています。
その結果、消耗品や飲食物などの買い物はネット通販から店舗購入へ戻すという人が増えていく可能性も否定できなくなります。
しかし、かつて日本人が竹籠をもって買い物に行っていたように、エコバックを持ち歩くという新しい習慣を作ることで、地球や環境、お財布にも優しい買い物をすることができます。
今では、スーパーやコンビニ以外に、アパレル業界などでもレジ袋を有料化する動きが出てきています。
また、過剰な包装を避け、環境にやさしいインクや素材を使うという配慮もなされています。
プラスチックごみを減らすためにできること
✓エコバックやマイボトルなどで使い捨てのプラスチック製品を減らす
✓なるべく詰め替え用ボトルを利用する
✓食品の保存は蓋つき容器を使い、ラップの使用頻度を減らす
✓レジャーやお出かけの際のごみは持ち帰る
✓自治体の清掃活動などに積極的に参加する
このほかにもプラスチックごみを減らす方法として、たくさんのアイディアや工夫があると思います。
また、「ごみは指定の場所・時間に分別して出す」という当たり前のことも環境への配慮につながります。
地球環境をこれ以上悪化させないために、今から取り組めることは積極的にやっていきたいですね!
<参考情報/引用元>
最終更新日: