「賃貸住宅を退去しようとしたら、高額な費用を請求されて泣く泣く支払った…」
賃貸を退去する際、こんな経験をされた方も少なくないのではないでしょうか?
退去費用や敷金に関するトラブルは、年々増え続けています。ぼったくられないためには、正しい知識をつけて「自分が支払う必要があるもの・支払う必要がないもの」をしっかりと知ることが大切です。
ということで本日は、退去費用のぼったくりを回避する方法を徹底解説!
いま現在、高額な退去費用を請求されて困っている方、これから引っ越しの予定がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
INDEX
退去費用のトラブルは増加傾向!
国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』によると、退去費用のトラブルに関する相談件数の推移は以下の通り。
平成17年度:15,271件
平成18年度:14,662件
平成19年度:14,675件
平成20年度:15,313件
平成21年度:16,767件
合計:76,687件
引用:国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』 p119
(https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf)
退去費用のトラブルに関する相談は、以前からとても多いということで問題視されていましたが、年を追うごとに増加傾向にあることが分かりますね。
件数を見ていただいても分かる通り、「他人事」とは思えない数字です。
自分の身を守るためにも、一人ひとりが正しい知識を持つことが必要不可欠なのです。
退去する際にやっておくべきこと
ここからは早速、退去費用に関するトラブルを回避するための具体的な方法を解説していきます。
入居時の契約書の内容を確認しておく
まず行いたいのが、「入居時に結んだ契約書の内容をチェックする」ということ。
契約書の何を確認すればいいかというと「特約」です。この特約に、オーナーにとって有利な内容が記載されていることが非常に多くあります。
たとえば、退去の際のハウスクリーニング費用は本来は入居者ではなく、オーナーが負担するべきものですが「退去時にハウスクリーニング費用として20,000円を請求する」という一文が特約として書かれていた場合、それは残念ながら支払う必要があります。
このように退去費用のトラブルは、退去時ではなく入居時にすでに始まっています。
本来は、入居する時点でしっかりと契約書の内容を確認し、おかしいと思ったことに関しては契約前にしっかりと主張することが大切なのです。
合意してしまった賃貸借の契約書は、原則としてお互いに守る必要があります。
いま改めて契約書を見返し、特約が設定されていることに気が付いて異議を唱えたとしても、スムーズに主張が通る可能性は低いでしょう。
とはいえ、あまりにも不利な特約に関しては、無効になる可能性もあります。
・暴利的であり、客観性や合理的理由がない
・入居者が原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していない
(具体的な金額が明記されていないなど、曖昧)
・入居者が特約によって義務を負担することに意思表示をしていない
上記の場合は無効になる可能性もありますので、納得できない不正な特約に関しては、管理会社やオーナーと話し合ったり、「少額訴訟手続」を利用して訴訟したりすることもひとつの手段です。
また、契約書に記載されている内容と矛盾する請求があったときはそれを指摘することもできますので、まずはしっかりと契約書を確認しましょう。
できるかぎり原状回復する
退去時の費用をできる限り安くするためには、日頃からこまめに掃除や換気を行い、汚れ・カビ・シミなどが定着しないようにしておくことが一番理想的です。
とはいえ、現実はなかなか忙しくてこまめな掃除ができなかったり、普通に扱っていても自然と汚れたりしてしまうことってありますよね。
そこで、退去することが決まったら、徹底的に清掃や補修を行い、できるだけ原状回復しておくようにしましょう。
当然のことですが、文句の付け所が無いほど綺麗なら費用を請求されることもありません。
退去前にチェックしたいポイントは以下の通りです。
●キッチン
ガスコンロ周り・五徳・換気扇・カウンターの油汚れ
シンクや蛇口の水アカ
排水溝のカビ・ぬめり
●トイレ
便座・便器裏の黒ずみ
水道・手洗い部分の水アカ
●浴室
壁や床の水アカ・カビ汚れ
排水溝と換気扇のカビ汚れ
●洗面所
鏡、蛇口、洗面ボウルの水アカ
キャビネットや照明器具の汚れ
●壁・天井
家具の裏や天井のカビ・スス汚れ
壁についた皮脂汚れ
エアコンからの水漏れによる汚れ
●床
フローリングのシミやカビ
フローリングの色落ち・ひっかきキズ
冷蔵庫下のサビ跡
できるだけ綺麗に原状回復しておき、指摘されうる箇所をひとつでも少なくしておくことが大切です。
汚損・破損は“入居中に”保険会社に連絡
・スマホを落としてしまってフローリングが凹んでしまった
・洗面ボウルに髭剃りを落としてヒビが入ってしまった
・子供が走り回ってトイレのドアにぶつかり破損してしまった
こういった汚損や破損に関しては、退去時に補修費用を請求される可能性が高いと言えます。
しかしここで朗報です!
現在入られている火災保険の補償内容によっては、うっかり偶発的に起こってしまった汚損や破損については、補償の対象になる可能性があります。
重要なのは“必ず入居中に保険会社に連絡する”ということ。
汚損や破損が2~3箇所と複数ある場合、「面倒だから、退去するタイミングでまとめて請求しよう」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、それはできません。
事故後すぐに連絡しないと保険金は支払ってもらえないのです。
そのため、汚損や破損が起こったら証拠となる写真を撮り、早急に保険会社に連絡するようにしましょう。
退去立ち合い時には絶対にサインをしない
退去立ち合いをすることになった場合、気を付けてほしいことがあります。
それは、「立ち合い時には絶対に請求書にサインをしない」ということ。
そもそも、正確な退去費用というのは立ち合い時の数十分~数時間で判断できるものではありません。
本来、退去費用の精算は設備の経過年数など細かな計算が必要なため、結果が出るまでには3日~1週間程度かかるのが普通です。
立ち合い時にその場で退去費用を確定し請求してくる場合は、ぼったくりの可能性が高いと言えます。
一度サインしてしまうと、後から法外な請求だということが分かっても、後の祭り。
請求所の内容に合意したことになってしまうため、もう変更してもらうことはできません。
「この場では判断できないため、内容を確認して後日連絡いたします。」と伝え、その場では何があっても絶対にサインしないようにしましょう。
『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を読んでおく
退去前にぜひ行ってほしいのが、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に目を通しておくということ。
これは、退去費用に関するトラブルがあまりにも多いことを受け、国土交通省が賃貸の原状回復に関する基準を明確にまとめたものです。
「どこまでをオーナーが負担し、どこまでを入居者が負担するべきか」がわかりやすく書かれています。
全部で169ページあり、読了するのに数時間ほどかかりますが、これに目を通しておくと、不当な請求に「これはおかしいぞ?」と気づくことができるようになります。
さて次の章からは、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』の内容を踏まえ、絶対に押さえるべきポイントを解説していきます。
『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』のポイント
この章では、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』をもとに、どこまでをオーナーが負担し、どこまでを入居者が負担するべきか、基本的な考え方をご紹介します。
自然な劣化・損耗は“オーナー負担”
まず覚えておいていただきたいのは、「原状回復」とは入居したときと同じ状態に戻すことではないということです。
どんなに部屋を丁寧に扱っていても、自然な劣化や損耗は避けることができません。
そういった、ちゃんとお手入れを行っても発生してしまう劣化や損耗に関しては、入居者ではなくオーナーが負担することになっています。
たとえば、「家具の設置による床のへこみ」「畳の色落ち」「テレビや冷蔵庫の後ろの黒ずみ(電気ヤケ)」などがこれに当たります。
次の入居者のための化粧直し・グレードアップは“オーナー負担”
また、次の入居者を確保するために行う化粧直しや設備の交換、グレードアップなどは、言うまでもなくオーナーが負担するべきです。
たとえば、「フローリングのワックスがけ」「(破損していない)網戸の張り替え」「エアコン内部の洗浄」「全体のハウスクリーニング」などがこれに当たります。
入居者が負担する必要があるものとは?
では、入居者が負担する必要があるものとはなんなのでしょうか?
それは、
「通常の使用で発生するが、ちゃんと手入れをすれば避けられたもの」
「通常の使用の結果とは言えないもの」
の2つです。
日常的によく起こることではあるものの、その後に適切にお手入れをすれば避けられたものは、入居者が負担する必要があります。
たとえば、「カーペットの飲み物をこぼしたことによるシミ・カビ」「台所の油汚れ」「クーラーの水漏れを放置したことによる壁の腐食」などが挙げられます。
明らかに入居者の使い方に原因があるものは、入居者が負担する必要があります。
たとえば、「タバコ等のヤニ・臭い」「壁に開けた画鋲や釘穴・ネジ穴」「ペットによる柱の傷・臭い」「落書きなどによる毀損」などがこれに当たります。
負担する場合でも経過年数によって「減価償却」される
「物を落として床の一部を傷つけてしまった…」
「子供が壁に落書きをしてしまった…」
そういった場合はたしかに入居者の負担となる可能性が高いといえます。
とはいえ、「フローリングやクロスを全部張り替えなければいけない」というわけではありません。
たとえば、クロスの場合は基本的に㎡単位、多くても一面分までとされています。
つまり壁の1箇所に落書きあった場合、部屋全体のクロスの張り替え代を負担しなくてはいけないわけではなく、その部分の1㎡分、どんなに多くても一面分だけ負担すればいいというわけなのです。
また、支払うクロス代に関しても、新品と同じ金額を弁償しなければいけないわけではありません。
時間の経過によってその物の価値自体もどんどん下がっていくとみなされるので、「退去時の時点でのクロスの価値」で計算されます。
これを「減価償却」と言います。
たとえば、クロスに関しては6年で残存価値が1円になるとされているため、もし入居から3年で退去する場合、負担しなければいけないクロス代は新品の約50%程度。そうなると、たいした金額ではありませんよね。
退去の際、明らかに新品価格で請求された場合は、しっかりと減価償却にして主張する必要があります。
シチュエーション別!オーナーの負担?入居者の負担?
壁、天井
・テレビなどの後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
・壁に貼ったポスターや絵画の跡
・エアコン設置による壁のビス穴、跡
・日照などによるクロスの変色
・壁などの画鋲やピンなどの穴(下地ボードの張り替えが不要な程度)
・結露を放置したことにより拡大したカビ、シミ
・タバコ等のヤニや臭い
・壁等のくぎ穴、ネジ穴(重いものを掛けるために開けたようなもので、下地ボードの張り替えが必要な程度)
・クーラーから水漏れし、放置したことによる壁の腐食
・天井に直接つけた照明器具の跡
・落書きなどの故意による毀損
畳・床
・破損していない畳の裏返し・表替え
・フローリングのワックスがけ
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・日照りや雨漏りなどによる畳の変色・フローリングの色落ち
・カーペットに飲み物をこぼしたことによるシミ、カビ
・冷蔵庫下の床のサビ跡
・引っ越し作業で生じた床のひっかき傷
・雨の吹き込みによる畳やフローリングの色落ち
・落書きなどの故意による毀損
キッチン
・冷蔵庫の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
・キッチンの消毒
・キッチンの油汚れ
・ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ・すす
襖、柱、窓
●オーナー負担
・破損等していない網戸の張り替え
・地震で破損したガラス
・自然に発生した網入りガラスの亀裂
●入居者負担
・飼育ペットによる柱等のキズや臭い
・落書きなどの故意による毀損
トイレ・風呂・洗面所
・トイレの消毒
・破損などはしていない浴槽、風呂釜等の取り換え
・風呂、トイレ、洗面台の水アカ、カビ等
その他
・専門業者による全体のハウスクリーニング
・エアコンの内部洗浄(たばこの臭いが付着している場合は除く)
・鍵の取り換え(破損や紛失が無い場合)
・寿命による設備機器の故障、使用不能
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
・鍵の紛失、破損による取り換え
・庭に生い茂った雑草
負担単位と経過年数による負担額の軽減
続いては、入居者負担となった際の負担しなければいけない単位と、経過年数によって負担額の軽減があるかどうかを説明します。
経過年数による負担額の軽減(減価償却)がある場合は、下記の表のように直線を書くと何パーセント程度負担すべきかが分かります。
たとえば、耐用年数6年のクッションフロアに傷をつけてしまったため、入居者が負担することになったとします。
入居してから3年目のときに退去するとなると、50%の負担額で済むということが分かります。
畳
原則1枚単位。
毀損などが複数個所の場合、その枚数分。
経過年数は考慮されない。
カーペット・クッションフロア
毀損などが複数個所の場合、その部屋全体分。
6年で残存価値1円となるような直線を想定して算出。
フローリング
原則㎡単位。
毀損などが複数個所に渡る場合、その部屋全体分。
経過年数は考慮されないが、部屋全体のフローリングを張り替える場合は、建物の耐用年数で残存価値1円となる直線を想定して算出。
壁(クロス)
㎡が望ましい。
しかし、毀損した箇所を含む一面までは負担することになってもやむをえない。※
6年単位で残存価値1円となるような直線を想定して算出。
※タバコのヤニや臭いに関しては、部屋全体分。
襖(ふすま)
一枚単位。
経過年数は考慮されない。
柱(はしら)
一本単位。
経過年数は考慮されない。
(考慮される場合は建物の耐用年数で残存価値1円となるような直線を想定して算出)
設備機器
補修部分・交換相当の費用。耐用年数経過時点で残存価値1円となるような直線を想定して算出。
主な設備の耐用年数は下記の通り。
・流し台:5年
・エアコン、ルームクーラー、ストーブ:6年
・冷蔵庫、ガス機器(ガスレンジ):6年
・インターホン:6年
・金属製以外の家具(書棚、たんす、戸棚):8年
・便器、洗面台などの給排水・衛生設備:15年
・金属製の器具や備品:15年
・ユニットバス、浴槽、下駄箱:建物の耐用年数
納得できない請求には「少額訴訟手続」を利用するのもあり
以上の内容をふまえ、請求が不当だと感じた場合は、具体的に指摘して請求書を見直してもらうようにしましょう。
交渉によっても解決しない場合、裁判により決着をつけるというのもひとつの手です。
「裁判というと、弁護士費用などでお金がかかるんじゃ・・・?」と不安な方もご安心ください。
簡易裁判所の「少額訴訟手続き制度」を利用すれば、60万円以下の金銭をめぐる訴訟なら、少ない費用(請求金額10万円あたり1,000円)で行うことができます。
たとえば請求金額が60万円の場合、申立手数料は6,000円となります。
また、短い期間で解決できるというのも大きなメリット。
原則として一回の審理で紛争を解決してもらえるので、普通の裁判よりも気軽に利用することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本日は、退去時の原状回復に関して「どこまでを負担するべきか」を解説いたしました。
賃貸の退去費用をめぐるトラブルは、年々増え続けています。
自分の身を守れるよう正しい知識を得て、不当な請求に対してははっきりと主張してみてくださいね。
<参照>