美肌菌ってなんのこと?皮膚の常在菌バランスや美肌を保つための方法を解説
乾燥しがちな冬が過ぎたと思えば、花粉と紫外線の強さが気になる春が訪れ、梅雨の湿気や汗によるベタつきが気になる夏到来。ただでさえ日本特有の気候が各季節での肌のお悩みとなっているのに、この2年は新型コロナウイルス感染対策のマスクも肌トラブルの一因に。
さまざまなお肌ケアと向き合う中で「肌はキレイに、清潔に保つことが基本!」「肌荒れの原因となる菌類はすべてやっつけよう!」と洗浄を入念にされている方も多いのではないでしょうか?
ただし洗いすぎも肌トラブルの原因となることがあります。本記事では、美肌に欠かせない皮膚の常在菌についてくわしく解説します。
ちょっと待って!洗浄で大事な「菌」を流しているかも
たとえばニキビについて取り上げてみましょう。
10代の頃はニキビに悩んだ経験がある方もいるのではないのでしょうか。「きちんと洗顔しなさい!」とお母さんにうるさくいわれた思い出が蘇る方もいるかもしれませんね。
たしかにニキビは患部に存在する「アクネ菌」という菌により発症するものと考えられています。しかしこの菌は人の毛穴の中に多く存在しており、ニキビが発生する原因だけではなく「肌を弱酸性に保って守る」という大事な働きをしている側面もあることがわかっています。
つまり、ニキビができる原因はこの菌の存在そのものではなく、毛穴の詰まりからこの菌が炎症を起こすことで発症することだといわれています。
肌にはこのアクネ菌を含む「常在菌」が存在しています。常在菌とは読んで字のごとく、主に健康な人の身体に日常的に存在する微生物(細菌)のことです。
菌と聞くと人体に何か悪い影響を及ぼすものではないのか?と疑いを持ちたくなりますが、実は皮膚を守るために良い働きをしているものも多いのです。しかも、顔に限らず全身の各部位で常在菌は肌を守ってくれていると考えられています。
良い働きをする常在菌とは?
アクネ菌以外の常在菌の代表例として「表皮ブドウ球菌」と呼ばれる菌があります。これは「美肌菌」とも呼ばれる、非常に良い働きをする菌といわれています。
この菌は肌に潤いを与える物質(例:グリセリン)を分泌したり、肌荒れ・アトピー性皮膚炎を引き起こす原因である黄色ブドウ球菌をやっつける成分(抗菌ペプチド)を量産して肌を守るとされています。
この菌は全身の角質の隙間などに存在しますが、特に顔に多く存在するといわれています。そのため顔の美肌を守りたい場合は、洗顔の頻度は最小限にしてゴシゴシ洗顔を控えることで、表皮ブドウ球菌による美肌作用の活発化が期待できるでしょう。
すなわち「美肌菌」とは?
常在菌のなかの「美肌菌」とはわかりやすくいうと「肌の環境を健康に保つために働いてくれる菌」のことです。
常在菌には善玉菌、悪玉菌、日和見菌といわれる菌があります。
善玉・悪玉と聞くと腸内環境の話題でもよく耳にしますよね。それと同じく肌にもそれぞれ存在し、善玉菌は肌にとって良い働きをしてくれる菌で、悪玉菌は肌トラブルを引き起こす原因といわれる菌です。先ほどの美肌菌、「表皮ブドウ球菌」は善玉菌のひとつに分類されます。
ちなみにニキビと関係深い「アクネ菌」は日和見菌に分類されます。日和見菌とは皮膚上の善玉菌と悪玉菌のバランスにより、良くも悪くもなる菌のことです。
美肌菌の働きは主に2つあります。1つは皮膚上の皮脂・汗をエサとしてグリセリンと脂肪酸を作り出すことで肌のうるおいを保ち(グリセリン成分)、肌を弱酸性に保ち(脂肪酸成分)、余計な雑菌や悪玉菌の繁殖を防ぐことです。
もう1つは肌を守る皮膚バリア機能を強化する働きです。美肌菌が多い肌というのは、赤みが少なく水分量が高い状態であることが報告されています。
反対に美肌菌が少ない肌は、赤みが高く水分量が低い状態、つまり「敏感肌」と呼ばれる肌の状態です。敏感肌は一般的に水分量の低下やバリア機能の低下が原因とされており、まさに美肌菌の割合が少ないことで発生しうると考えられているのです。
常在菌のバランスを保つために
では美肌菌が多く存在する肌になるには、どのように常在菌と向き合えば良いのでしょうか。肌トラブルを防ぐには、常在菌のバランスを保つことが大事です。その方法をいくつかご紹介します。
・洗浄頻度・方法
石鹸を使っての頻繁な洗浄やゴシゴシ洗いは控えましょう
・睡眠前に化粧オフ
寝ている間の代謝を阻害しないよう、また毛穴汚れや余計な雑菌繁殖を防ぐため、寝る前に必ず化粧を落としましょう
・顔に使用する道具を清潔に保つ
普段使用しているスポンジ、パフ、ブラシ等、直接肌に触れるものは定期的に洗って清潔にしておきましょう
・生活習慣
美肌菌の住む環境を整えるため、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠といった生活習慣の基本についても心がけましょう
・保湿ケア
夏場でも乾燥注意!エアコンを使用した環境に長時間いる場合や長めに入浴した際は保湿ケアを忘れずに
まとめ
肌トラブルを予防するには必ずしも「肌を清潔に保つ=顔の菌をきれいに除去する」ではありません。美肌菌のように肌を守る常在菌のおかげでお肌の調子が保たれています。
つまり美肌には常在菌のバランスを保つことが大切。日々の肌の洗浄頻度や方法、また毎日の食事・運動・睡眠の状態を見直し、美肌美人を目指してみてはいかがでしょうか?