肌の中に潜む「ゾンビ細胞」が老化の原因だった?!化粧品で老化細胞は除去できる?
「あれ、こんなとこにシミあったっけ・・・?」
「最近小じわが増えてきたな・・・」
年齢を重ねるごとに現れる、エイジングのサイン。
誰しも一度は「いつまでもずっと若々しさを保つことができたらいいのに。」と思ったことがあるのではないでしょうか?
近年、「老化」について研究が進められています。
そんな中、さまざまな老化現象を引き起こす、大きな要因が分かってきました。
それが“ゾンビ細胞”。
ゾンビ細胞は、体内のさまざまな組織や内臓、
そしてなんと肌にまでダメージを与えてどんどん老化を進めてしまいます。
今回はそんなゾンビ細胞にクローズアップ。
現時点でどのようなことが分かっているのか、そしてどうすれば老化を防ぐことができるのか、ということについて考えていきたいと思います。
老化細胞が代謝されずにゾンビ細胞に?!
“ゾンビ細胞”
なんとも物騒な響きですよね。
近年、このゾンビ細胞こそが老化現象の大きな原因のひとつではないか?と注目されています。
そもそも、ゾンビ細胞とはどんな細胞のことなのでしょうか?
まずはゾンビ細胞が何者なのかということについてご説明させていただきます。
私たちの体の中には、約37兆個もの細部が存在しています。
細胞には分裂寿命というものがあり、数十回細胞分裂したら分裂は自然に止まります。
また、紫外線ダメージや酸化ダメージといった強い損傷を受けた細胞も、細胞分裂は止まります。
こういった「もうこれ以上は細胞分裂できない」というレベルに達した細胞のことを“老化細胞”と呼びます。
老化細胞が発生するのは、いたって普通のことです。
言葉の響きから「お年を召した方の身体の中に存在する細胞」と勘違いしてしまいがちですが、老化細胞は若い人の体の中にも、赤ちゃんの体の中にも存在しています。
問題なのは、「老化細胞がいつまでも居座り続ける」ということです。
老化細胞になってしまった細胞は、本来であれば自ら死んで壊れたり、NK細胞などの免疫細胞などに食べられたりすることで体内からいなくなります。
しかし、老化細胞になってしまったにもかかわらず、なぜかなかなか体内からいなくならず、臓器や組織に居座ってしまうことがあるのです。
これを“ゾンビ細胞”と呼びます。
ゾンビ細胞が身体に与える影響とは
ゾンビ細胞は、ただ体内に居座るだけではありません。
「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)因子」と呼ばれる炎症物質をばらまき、周りの若い細胞にダメージを与えてしまうのです。
ゾンビ細胞は常にこの炎症物質を分泌し続けることによって
周囲の細胞には目に見えないレベルの小さな炎症が持続的に起こります。
これを「慢性炎症」と呼びます。
ゾンビ細胞は細胞分裂をしないにもかかわらず、死にもせず、
まるで死体がよみがえるかのように炎症物質を出して周りの細胞まで老化に導いていく様子が、まるでゾンビのようだということでこのように呼ばれています。
ゾンビ細胞が分泌するSASP因子によって体内で慢性炎症が起こると、
身体はじわじわと老化が進んでいきます。
それに伴い、がん、糖尿病、白内障、アルツハイマー、骨粗しょう症といった様々な病気にもつながると言われています。
そしてもちろん、ゾンビ細胞は肌の中にも発生することがあります。
それによって肌に慢性炎症が起これば、メラニンが生成されやすくなってシミが増えたり、コラーゲンの分解を促進することでシワやたるみが起こりやすくなったりします。
つまり、ゾンビ細胞が蓄積すればするほど、体の外側も内側も老化が進んでいくというわけなんです。
本来取り除かれるべき老化細胞が代謝されずにゾンビ細胞になってしまう現象は若い人の身体の中でも起こりますが、年齢を重ねるほどその頻度は高くなる傾向にあります。
そしてこれこそが、老化の大きな要因のひとつだと考えられているのです。
ゾンビ細胞を蓄積させない方法とは
なぜ細胞死せずにゾンビ細胞になってしまうのか、
どうしたらゾンビ細胞の蓄積を防ぐことができるのか、ということについては、現在世界中で研究が進められている途中で、まだその確実な方法というのは見つかっていません。
しかし、いくつかのヒントは見つかっています。
老化細胞研究の第一人者である大阪大学の原英二教授は、老化細胞がたまらないようにするために「肥満を防ぐこと」を推奨しています。
原研究室でマウスを用いた研究を行った結果、高脂肪の食事を食べ過ぎて肥満になると、腸内環境が変化して悪玉物質が生み出され、それが肝臓に運ばれて老化細胞が蓄積されることで、SASP因子が発生して肝臓がんを発症するということが解明されたんだそうです。
それを防ぐために重要なのが、「定期的な運動」とのこと。
定期的に運動を続けていれば、老化細胞が蓄積していくのを抑えることができる可能性があるそうです。
中年マウスを高脂肪のエサで飼育すると、脂肪組織に老化細胞が蓄積する傾向がありましたが、有酸素運動をさせると老化細胞が溜まりにくくなるという結果になりました。
つまり、ウォータキングやジョギングといった有酸素運動は、老化細胞が代謝されずにゾンビ化してしまうことを防げる可能性があるんです。
参照:Beyond Health - 老化細胞(ゾンビ細胞)の謎が分かった -https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00043/120100006/?P=1
肌のゾンビ細胞にアプローチする化粧品成分
先ほど、ゾンビ細胞は肌にも影響を与えると言いました。
肌に蓄積したゾンビ細胞が、シミ・シワ・たるみといった老化現象に繋がるんでしたね。
体内の健康はもちろんですが、
せめて見た目の老化だけでも食い止める方法はないのでしょうか?
近年、ゾンビ細胞や医療分野のみならず美容分野においても研究の的となっています。
いろいろな化粧品会社が、肌に蓄積したゾンビ細胞を取り除く方法を日夜追い求めているのです。
そんな熱心な研究の成果もあり、ゾンビ細胞にアプローチできる成分が少しずつ見つかってきました。
こういった成分が配合されている化粧品を取り入れることにより、外からエイジングを防ぐ効果が期待できます。
ここからはその貴重な成分たちをご紹介していきます。
(1)Wインナーディフェンス(資生堂)
資生堂が発見したのは「Wインナーディフェンス」という技術。
本来、老化細胞はNK細胞という免疫細胞によって食べられることで体内からいなくなります。
しかし、なんらかの理由によりこのシステムが上手く働かないことでゾンビ細胞が生まれてしまうんでしたね。
資生堂はその原因のひとつとして「NK細胞のはたらきが弱まっている」ことが関係している可能性があるということを突き止めました。
そして、NK細胞を活性化するカギとして辿り着いたのがハイビスカスの一種である「ローゼル」という花の萼(がく)です。
さらに資生堂は、乳酸菌にも免疫機能を強化する作用があることに着目。
ローゼルを乳酸菌で発酵させた「赤花発酵エキス」に、NK細胞を活性化する作用があることを発見したのです。
また、元気になった免疫細胞を「肌のすみずみまで届ける」ことも、ゾンビ細胞にアプローチする上で重要です。
加齢や外敵のダメージによって衰えた肌では、毛細血管がいびつになるだけでなく、血流が滞って細く脆い毛細血管は消失してしまうことも。
そこで資生堂が目を付けたのが「ジュウヤクエキス」という成分。
このジュウヤクエキスには、毛細血管を太く強く強化して、肌全体にはりめぐらせる効果があることが分かりました。
「赤花発酵エキス」によってNK細胞を活性化させ、「ジュウヤクエキス」がそれを肌のすみずみまで届ける、というWインナーディフェンスにより、ゾンビ細胞にアプローチすることが可能になりました。
参照:資生堂公式サイト -血流を促し、免疫力にブーストをかける
「Wインナーディフェンス」とは? -
(2)メドウスイートエキス(ノエビア)
ノエビアはゾンビ細胞を除去できる素材を探した結果、自社農場である「北海道暑寒別岳パイロットファーム」で有機栽培した『メドウスイート』という植物にそのようなはたらきがあることを発見しました。
メドウスイートとは、甘い香りを持つ多年草の一種。
ポリフェノールの一種であるケルセチンを多く含有しているということで知られます。
そんなメドウスイートから抽出したエキスには、「正常な細胞には影響を与えずに」老化細胞のみを選択的に取り除くということが分かったのです。
参照:ノエビア公式サイト - 皮フの老化細胞を除去する「メドウスイート」を発見 -
(3)ナナカマドエキス(メナード)
メナードは、免疫細胞の一種である「マクロファージ」に着目。
マクロファージはNK細胞と同じく、老化細胞を食べてくれるという重要なはたらきがあります。
しかし、マクロファージが処理できる量を越えた老化細胞が出現すると、マクロファージの機能は低下していき、結果的に老化細胞が蓄積していってしまいます。
そんなマクロファージの機能を高めるはたらきが、赤い果実がなる落葉樹「セイヨウナナカマド」から抽出したエキスにあることが発見されました。
セイヨウナナカマドエキスは、マクロファージのはたらきを高めることで老化細胞の除去を促進し、さらに幹細胞による肌の再生も促されることが期待されています。
参照:PRTIMES - 日本メナード化粧品、肌の免疫力を高めることで真皮の再生を促す植物エキスを開発! -
ゾンビ細胞を除去する薬の開発が進んでいる?
まだ実用化までは至っていないものの、近年は老化細胞を除去する薬の開発も進められています。
たとえば、順天堂大学大学院医学研究科循環器内科の南野教授は、老化抗原であるGPNMBという分子を標的にしたワクチンについて研究しています。
このワクチンを投与すると、血管や臓器に溜まったゾンビ細胞に対する抗体がつくられ、免疫細胞がゾンビ細胞を異物として認識するようになって除去されるという仕組みです。
参照:老化細胞(ゾンビ細胞)の除去、ワクチンで成功
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00043/030300009/
こういった薬や技術は「セノリティクス(老化細胞除去)」と呼ばれ、現在世界中で研究が進められています。
薬で若返りが実現する未来も、そう遠くはないかもしれませんね。
まとめ
本日は、肌老化の大きな要因のひとつと考えられている「ゾンビ細胞」について解説しました。
「いつまでも若くいたい」というのは古今東西かわらぬ願い。
そんな人類の願いが、かなり実現に近づいているように感じますね。
まだ若返りの薬は手に入りませんが、「有酸素運動をする」「ゾンビ細胞にアプローチする化粧品を使う」など私たちにできることは色々とあります。
いつまでも若々しく健やかでいられるよう、ぜひ毎日のルーチンに取り入れてみてくださいね。
執筆者プロフィール
コスメコンシェルジュ
宇佐美うさ(うさみ・うさ)
東京都下生まれのコスメコンシェルジュ。
美容業界に従事し約10年。化粧品販売員・化粧品商品開発者・美容ライター等の経歴を持つ。
近道でキレイになるための方法や、化粧品成分の読み解き方を発信すべく活動している。
一番の関心事はエイジングケア。
保持資格
化粧品検定1級